アトリビューション計測会社が主張する中立・独立の立場は幻想か?
AppsFlyerを立ち上げた2011年、マーケティングや広告は私たちにはまるっきり新しい分野でした。私が2010年にはじめてiPhoneを手にしたとき、すぐにこの端末が私たちの生活を一変させるだろうと思ったものです。
それからアプリ開発者たちはユーザーがどこからアプリをインストールしたのか知るすべがないことにも気付きました。当時(現在も)のマーケットはまさにゴールドラッシュ。アプリマーケターがユーザーの行動を計測する技術も整っていなかったため、場当たり的な考えが正当な戦略としてまかり通っていました。
LUMAscapeのカオスマップ (上図)を目にしたときの自分の反応をいまでも覚えています。この図からはっきりと見て取れたのは、米国企業が多いこと。各企業がどんな価値を生み出しているのか、さらにはお互いにどういった利益をもたらしているのかさっぱりわかりませんでした。そのとき計測の必要性を確信したものの、どのような役割を果たせるかわかりませんでした。
そこで私はマーケットの一辺だけにターゲットを絞り、マーケターの役に立つ一流のテクノロジー、プロダクト、サービスを開発することを決意。明確なミッションを持って、たずさわる関係者すべての利益をクリアにすれば、お客さんと強い信頼関係を築き、オープンで透明性のあるコミュニケーションをはかれると私は信じていました。このスタンスを貫けば、マーケターとエコシステム全体にものすごい価値を提供できるのだと信じて疑いませんでした。
AppsFlyerは「中立」や「独立」といったワードを営業やマーケティング向けにやみくもに使っているわけではありません。この価値観はしっかりと組織のDNAに刻まれています。クライアントを成功に導くことをミッションに掲げている理由も、かかわりを持つステークホルダーたちと一切利害相反にないからです。
たとえばの話、不動産を買うときに弁護士を雇わずに購入に踏み切れるでしょうか?資産面において協力してくれる弁護士が不在のまま、売り手または売り手側の弁護士の言葉を信じることができるでしょうか?もちろんできないはずです。
ではなぜ数十億ドルもの広告費の計測を扱っている自称「中立的立場」のアトリビューション計測会社だとこれが通用するのでしょう?答えはきっとみなさんもお分かりのはずです。業界全体の知識不足と不透明性が原因です。だから今回、私はこのブログを通じて嘘偽りなくすべてを語ろうと思います。
アトリビューション計測のビジネスにおいて、中立性と独立性の意味を理解するための基本ポイントが5つあります。
1. 両サイドに立つ – 広告主と広告媒体主・アドネットワークの双方をクライアントに持っている
アトリビューション計測会社のなかには、収益の大部分を占めるアドネットワークに対してプロダクト・サービスを別で販売しているところがあります。さらに悪質なことに、要望があればクライアントのデータを売っているところも一部存在します。アトリビューション計測会社にはどういったクライアントがいて、どのように収益を得ているか把握しておかないと、気付かないうちにあなたも被害者になっている可能性があります。
AppsFlyerの決意表明: 会社立ち上げ初日、私たちは広告主サイドに立って、広告主だけをAppsFlyerのクライアントとすることを決めました。アドネットワークにはなにも売らず、連携パートナーとの間に金銭的利害関係は一切ありません。アトリビューション計測の第一人者として、私たちがこの立場を貫くことはきわめて重要です。その理由は、クライアントである広告主を守るために、AppsFlyerのエコシステムの規制を強化し、AppsFlyerのプラットフォームから不正を排除していく方針だからです。
私たちの透明性あるスタンスは、広告主のみならずパートナー含め、業界全体において信頼関係を築くきっかけをつくったと信じています。きっとアドネットワーク側も、アトリビューション計測会社のプロダクト・サービスを購入しないことを理由に不当な扱いは受けたくないでしょうし、かと言って優遇されることと引き換えに購入を迫られたくないはずです。
2. 顧客データを販売または悪用
多くの企業にとっていちばん大事な資産は間違いなくデータでしょう。アトリビューション計測会社が広告主の連絡先を競合他社に渡していたり、データを売ってお金を稼いでいたり、あなたの会社の競合相手になるようなアプリ事業を手がけていたり、ある日突然競合相手になっていたり…。信じられないかもしれませんが、これはすべて実際に起きている話です。私たちのもとへデータ(広告主のデータ)を買いたいと連絡してくる人は後を絶ちません。
ビジネスをバックアップしてくれる資金の調達先がなく、会社の資金繰りのために売上を重視せざるを得ない場合は、きっとこうした誘惑に負けてしまう可能性があります。AppsFlyerが大型の資金調達に踏み切った理由も、まさにこのような広告主に不利益となるような衝動にかられることを防ぐためです。私たちは資金を調達できたおかげで、安心して広告主に価値あるサービスを提供することだけに専念できています。
アトリビューション計測会社が顧客データを売ったり悪用したりしている場合、広告主は一気にリスクにさらされます。これは深刻な利益相反状態と言えますし、広告主の信頼を利用し両サイドに立つことによって不公平な優位性を得ている可能性があります。
AppsFlyerの決意表明: 広告主のデータを売る、悪用する、といった行為は、今までもこれからもありません。広告主のいちばん大事な資産であるデータを守るために利害が相反する行為をしたり、広告主の不利益となるような目的で使用したりすることもありません。
3. 独立
独立しているということは、利益相反を生じることなく、自由裁量で広告主を成功に導くことができます。アドネットワークに対してメディア、サービス、プロダクトを売っているアトリビューション計測会社が独立しているとは言い難いです。具体的には、アトリビューション計測会社の創業者や上層幹部が非上場のメディア企業に投資することはできません。これに反すると、会社とクライアント間で利益相反が生じるだけでなく、創業者、経営陣、会社、従業員、その他株主との間にも利益相反が生じます。
AppsFlyerの決意表明: AppsFlyerが独立性を保つためには、どんな手段を取ることも厭いません。AppsFlyerは、データやメディアを売ることも、広告主の不利益となり得るプロダクトやサービスを販売することも、AppsFlyerの創業者および経営陣が非上場会社に投資することもありません。そして、いかなる場合でも、パートナーを優遇するような行為は決しておこないません。
4. 投資家と株主
私たちは過去数年のあいだに、数々の投資家に声をかけられてきました。マーケットや広告主のデータに興味を持つ人もいれば、メディア側の立場の人もいました。このような人たちを投資家として受け入れていたならば、AppsFlyerの中立公平な立場が危うくなっていたことでしょう。だからこそAppsFlyerにとってフィデリティ(Fidelity)、ゴールドマンサックス(Goldman Sachs)、ほか大手ベンチャーキャピタルのような世界トップレベルの金融機関からのみ資金調達をおこなうことが最優先でした。AppsFlyerは投資家と取締役に関する情報を透明性を持って開示しています。
データの預け先ともなるアトリビューション計測会社の投資家、株主、取締役会を知り、ビジネスの長期的な目標を把握することは重要です。これらを知らずに大切なデータを預けてはいけません。
AppsFlyerの決意表明: AppsFlyerは今後も中立公平な立場を脅かす可能性のある投資家からの誘いを断り、いかなる場面においても広告主を第一に考えた意思決定をおこないます。広告主に悪影響を与えかねない活動にも一切関与しません。
5. 非中立的なアトリビューションツールは本当に不正広告対策を徹底できるのか?
答えははっきり言って「NO」です。アトリビューション計測会社が非上場企業と金銭的利害関係にある場合、その不正広告対策は不備だらけでしょう。内在的な利害の対立があると、不正広告に対して真剣に取り組むことができません。実際問題、非中立的な立場にあるアトリビューション計測会社が、お金を払って自社プラットフォームを利用してくれている不正集団を率先して排除するでしょうか?私はそうは思いません。
AppsFlyerの決意表明: これからも引き続き不正広告対策の技術に多額の投資をおこなっていきます。不正侵入を発見した場合は、流入源にかかわらずそれを遮断し、AppsFlyerと連携しているメディアソースにも同様のことを課します。有言実行を果たし、業界の基準値を上げることで、広告主、連携パートナー、業界全体がウィンウィンな関係、かつ長期的に持続できるシナリオをつくることを約束します。
<まとめ>アトリビューション計測会社を決めることは多くの企業にとって重大な決断です。AppsFlyerは、ゴールドマンサックス(Goldman Sachs)、フィデリティ(Fidelity)、ドイツテレコム(Deutsche Telekom)が主導する厳格なデューデリジェンスのプロセスを通過しているので、安心してご利用いただけます。このプロセスでは競合分析、プロダクト、テクノロジー、ビジョン、そしてミッションについて掘り下げていきます。冒頭でも述べたように、私たちのミッションは何がなんでも広告主を成功に導くこと。それが、AppsFlyerのDNAです。