はじめに
パンデミックにより加速したモバイルの利用の増加、そしてゲームの選択肢とユーザーの需要の爆発的な増加を受けて、ゲームのマーケターはクリエイティブによるユーザー獲得と魅力的で楽しいユーザー体験の創出に多額の投資を行ってきました。
モバイルゲームは驚異的なペースで成長を続けており、モバイルアプリ業界全体の業界標準として扱われています。AppsFlyerの最近の調査によると、2021年にAndroidでインストールされたゲームアプリの総数は、前年比で22%増加しています。これは、ゲームアプリの一般化にパンデミックが大きな影響をもたらしたことを示しています。
ゲームアプリでは、ユーザー獲得(UA)に投じられる予算が増大しています。2021年にはゲームアプリによるユーザー獲得に145億ドルが使用されており(中国を除く)、世界の予算の半分を米国が占めています。同時に、プライバシーポリシーの強化は、iOSでの前年比13%の減少につながっています。Androidでは35%増加したため、全体で18%の増加となっています。
ゲームアプリ業界に漂う時代の先端を走る雰囲気は、マーケター達の確かな知識によるものです。ゲームアプリ業界のマーケター達は、高いアンインストール率と低いリテンション率に直面しつつも、開発部門とともに工夫を凝らしてきました。また、ゲーム業界の熾烈さが、マーケター達をデータ利用と収益性の追求に駆り立ててきました。
ところが、プライバシー重視の時代の到来によって取得できるユーザーレベルのデータが限定され、集計データでゲームアプリがパフォーマンスを発揮できなくなっています。
データは、ゲームのパフォーマンスの向上に不可欠です。本ガイドでは、モバイル計測とマーケティング分析でも重要な因子であるデータを詳細に分析します。
それでは始めましょう!
モバイル計測が初めての方は入門ガイド(英語版)もぜひお読みください
5つの主な課題
ゲーム業界のエコシステムは、新しいジャンルが生まれ、ユーザー獲得戦略やマネタイゼーション、予測モデルも新しくなるなど、過去10年で大きく変化しました。
誰かが新しいタイプのゲームを考案する、あるいはアプリマーケティングの可能性を押し広げると、すべてのジャンルのデベロッパーとマーケターがそれに追従するということが、何度も繰り返されてきました。
この進化によって、ゲーム業界は成長を続けていますが、同時に多くの課題にも直面することになりました。その中の主なものについて、ここで紹介します。
1 – 競争の激化
モバイルゲームの種類が急激に増加したことで、業界内の競争が熾烈になっています。一方で、デベロッパーが新しいゲーム、新しい機能、新しい戦略などの開発をさらに押し進めることにより、ゲームはもっとも生産性の高い業界となっています。
さらに、大手のゲーム会社が小規模なゲーム会社を買収することによって統合(英語)が急速に進み、アプリストアでユーザーにアプリを見つけてもらうことが難しくなったことで、ユーザー獲得がさらに活発に行われるようになっています。
2 – 高まるユーザーの期待値
モバイルゲームエコシステムの進化がもたらしたのは、開発されるゲーム数の増加だけではありません。ゲームを試しては、比較的速いペースで別のゲームに乗り換えるユーザー数も増加しました。
モバイルプレイヤーの典型として、期待していた使い心地でないゲームに対して厳しいという点があります。AppsFlyerのデータによれば、現代のゲームプレイヤーは他のアプリに比べて多くのゲームをアンインストール(ほとんどが1日目に)しており、リテンション率は控えめに言っても高くはありません。
3 – データの複雑性
ゲーム数とユーザー数の増加は、セグメント、キャンペーン、クリエイティブ、アプリ内イベントの種類の堅調な増加につながっています。
その結果として、大量のデータが生み出されています。
パフォーマンスを最適化することを目的としたビッグデータ分析は、分析頻度(リアルタイムまたは定期的)や予測モデルの構築目的に関わらず、大きな課題です。
ゲームアプリマーケターは、ビッグデータ分析に外部ツールを使用しています。リソースがある場合は、社内ソリューションを開発し、KPI達成のためにデータアナリストを採用しています。
4 – プライバシー重視の時代におけるモバイル計測
この数年間、特にiOSのモバイルアプリマーケティングでは、プライバシー保護が話題の中心となってきました(Androidでの変更は、少なくとも2年以上、先になります)。
AppleによるATTポップアップの導入は、一意の識別子であるIDFAの使用を大きく制限しています。その結果、ユーザーレベルのデータを以前ほど容易に取得できなくなっています。
アプリの所有者は、詳細で実用的なインサイトを手に入れるために、新しいものやそれほど新しくないものを含む、多くのソリューションを使用するようになっています。その例を以下に示します。
- SKAdNetwork – Appleの集約式の特定型アトリビューションソリューション。このフレームワーク(英語)の範囲内で、マーケターはSKANコンバージョン値を使ってインストール後のユーザーの価値を評価できます。
- ユーザーレベルの特定型アトリビューション – ATTのオプトイン率は多くのショッピングアプリで47%程度であり、これらのユーザーに関する十分なデータ粒度を確保できるだけでなく、同意のないオーディエンスに対するセグメンテーションを行うこともできます。
- 集約式の確率論的モデリング – 機械学習を利用してキャンペーンのパフォーマンスの高精度な評価を行う統計論的な手法。
- 予測分析 – マーケターは、ファネル初期の非常に限られたデータポイントに依存しながら、強い確信を持ってユーザーの将来価値に関するデータドリブンな意思決定を行うことができます。
- トップダウン式の計測 – インクリメンタリティ(増分収益ドライバーを特定して予算配分を最適化する方法)などの包括的な方法と、メディアミックスモデリング(MMM)(キャンペーンの影響を計測して、さまざまな要素が最終利益にどのように貢献するかを判断する方法)があります。
- Data Clean Room – 許可を必要とする安全性の高い環境で、プライバシーに準拠した計測と最適化を可能にします。これにより広告主は、ユーザーレベルのデータにアクセスせずに、ユーザーレベルのデータのインサイトを利用できるようになります。
このようなプライバシーを重視した変更は、マーケターによるLTVの計測、リマーケティング広告、オーディエンスのセグメント化に直接的な影響を与えています。幸い、計測においては引き続き確実なイノベーションが進んでおり、データからもわかるように、ほぼATTの導入前のレベルにまで回復しています。
5 – 不正
あらゆる業界の中で、不正インストール率の影響がもっとも少ないのはゲーム業界です。その主な理由は、ゲーム業界にはビジネスを不正から守るための知識とノウハウがあること、もう1つの理由は、ショッピングアプリや財務アプリと比べるとCPI報酬が低いことです。
AppsFlyerのデータによると、ゲームアプリ全体の平均不正インストール率は2%です(ゲームアプリの2%が実際に不正にインストールされている)。一方で、アプリ内不正については状況が異なり、ゲームアプリ全体の平均値は5%です。これらのアプリ内不正のうち、11%がAndroid、13%がiOSで発生しています。
AppsFlyerは、機械学習とビッグデータの両方を利用して、不正防止ソリューションを提供しています。詳しくは、こちらをお読みください。
解決策 – すべての基礎となる詳細な計測
これらの課題を解決するには、さまざまなデータツール(内部または外部を問わず)を利用すること、絶え間なく起きる業界の変化やトレンドに常に敏感であること、革新的な「常に試す」精神を持っていることが重要です。
常に需要に応え成長させながら、広告費のリターンを大きくするよう正しい意思決定を下していくことが成功につながります。
無数の競合他社を相手に、この成功を掴むことは簡単なことではありませんが、本ガイドはそれを可能にすることを目的としています。
計測項目
ゲームアプリのための効果的なマーケティング分析に必要なデータを得るには、何を計測し何を設定しなければならないのでしょうか?第1章ではその質問にお答えします。
KPI
モバイルゲームではさまざまなKPIの計測を行いますが、利益につながる新規ユーザーを大規模に獲得するという、ゲームアプリのマーケターの最重要目標に対して計測すべき指標はそれほど多くありません。
ユーザー獲得の観点で計測すべき指標は次のとおりです。
KPI/用語 | 定義 | 重要である理由 |
eCPM(Effective Cost Per Mille) | 1,000インプレッション(Mille)ごとに生成される収益。 広告から得られた総収入をインプレッションの総数で割り1,000を掛けた値。eCPM = ([広告から得られた総収益] / [インプレッション総数]) x 1,000 | トラフィックの質の評価、CPMの決定において基本となる値。 CPM:広告主が1,000インプレッションあたりに支払う料金。eCPMは、1,000インプレッションあたりにパブリッシャーが得る報酬。 |
CPI(Cost Per Install) | 1件の新規インストールの生成にかかるコスト。 | 1人の新規ユーザーの獲得の価格設定の基準に利用されます。地理、プラットフォーム、デバイスなど、多くの因子の影響を受けます。 |
IPM(Install Per Mille) | 1,000インプレッション(Mille)ごとに生成されるインストール数。IPM = ([インストール数] / [インプレッション数]) x 1,000 | キャンペーンのパフォーマンスの評価に役立つ指標。IPMが高いほど、キャンペーンの効果が高いと言えます。IPMが低い場合は、クリエイティブによるユーザーエンゲージメントが低いことを意味している可能性があり、ターゲティングの最適化、あるいはクリエイティブ自体の変更を検討する必要があります(さらに読む)。 |
RPM(Revenue Per Mille) | メディアプロパティで1,000インプレッション(Mille)を達成するたびにアプリが獲得する広告収益の金額。 RPM = ([広告収益]/ [インプレッション数]) x 1,000 | RPMは、RPC(クリックあたりの収益)とは異なり、アプリのインストールやサービスへの登録などの特定のユーザーアクションを目的とするのではなく、接触率とブランド認知の向上を目的としたキャンペーンに最適です。 |
NOI(非オーガニックインストール)のシェア | 有料チャネルまたはオウンドチャネルでのマーケティング活動の結果として行われたアプリのダウンロードの割合。 | 競争の激化により、ほとんどのゲームは有料チャネルまたはオウンドチャネルを介した需要喚起に大きく依存しています。NOIのシェアによって、その成功率をより効率的に計測することができます。 |
オーガニックコンバージョン率 | 費用を必要としないチャネル(オーガニック検索、ソーシャルメディア、報道での言及)により得られたコンバージョンのパーセンテージ。 | 費用をかけずアプリがどれだけ拡散できるかを見ることができる指標。費用なしでの新規ユーザーを獲得する方法についても知ることができます。 |
K係数 | 獲得にコストを要したユーザー数に対し、コストを要さなかったユーザー数の比率(たとえば、マルチプレイヤーゲームで、既存プレイヤーが招待した新規プレイヤー)。 | K係数が高ければ、アプリは成功しており、1人あたりの平均ユーザー獲得費の削減が可能です。たとえば、3ドルのコストを要した1回のインストールが、さらに2回のインストールにつながった場合に、各インストールに要したコストは1ドルになります(さらに読む-英語版)。 |
リテンション率 | インストール後、一定の期間中にアプリに戻ってくるプレイヤーのパーセンテージ(インストール後、1、3、7、14、30日目に計測されることが多い)。 | アプリの経時的なパフォーマンス評価において重要な指標。リテンション率の高さは、繰り返し利用されていることを示し、そのゲームがユーザーに対して真の価値を提供していることを証明します。マネタイゼーションの基準であり、予測モデルにおける重要因子でもあります。 |
離脱/アンインストール率 | インストール後、一定の期間中にユーザーがアプリをアンインストールする率。 | アプリ業界でアンインストール率がもっとも高いのがゲームです。アンインストール率について詳細に分析することで、セグメンテーションやユーザー体験の不備など、アプリが削除される要因の究明と、離脱による損失の算出が可能になります(さらに読む)。 |
DAU(Daily Active Users) | 1日に1回以上アプリを使用する個別のユーザー数(1日に3回ゲームを起動する個別ユーザーは、1日あたり1人のアクティブユーザーとしてカウントすることに注意)。 | エンゲージメントとリテンションを増やした場合に見込まれるゲームの可能性の評価に役立ちます。 DAU数をコホート分析することで、ゲーム内の新機能の成功度合い、またはアプリストアでの新機能の効果を評価できます(さらに読む)。 |
MAU(Monthly Active Users) | 30日間でアプリを利用した個別のユーザー数(30日間のうちに、ゲームを利用した日数が5日だったユーザーは、1か月あたりの1人のアクティブユーザーとしてカウントすることに注意)。 | ユーザーベースの大きさを示す指標。 |
定着度 | ユーザーが30日間のうちにアプリにアクセスした日数。 定着度 = ([DAU] / [MAU]) x 30 | ゲームの重要度と、どの程度繰り返し利用されているかを示す指標。一貫して毎日アプリを利用するユーザーがいることによって、定着率が高くなります。 |
ARPU(Average Revenue Per User) | ある一定期間のコホートにおいて、収益総額をユーザー総数で割った値(例:30日目のARPUとは、インストール後30日間で、1人のユーザーにより生成された平均の収益)。 | プレイヤーの価値の評価およびユーザー獲得の予算計画に使用されます。購入、広告、サブスクリプション、アプリに対し支払われた料金など、収益を生成するすべてのアプリ内イベントを含みます。 |
ARPPU(Average Revenue Per Paying User) | アプリ内購入を行ったプレイヤーについてのみ計測。収益の総額を、収益を生成したユーザーの総数で割った値。 | 既存のIAP(アプリ内購入)イベントの効率性と成功率、およびその他のイベントが及ぼすIAP収益への影響の評価に使用されます(例:支払うよりも広告を見ることを選ぶオプションなど)。 |
LTV(Lifetime Value) | 顧客生涯価値。1人のユーザーがゲームをプレイするすべての時間において生成する収益(エンゲージメントの日数に1日あたりの平均支出を掛けて算出)。 | LTVは、ARPUと併せて、ゲームまたはユーザーの合計価値の評価に役立ちます。[LTV] > [コスト] という目標を満たすため、ユーザー獲得費に投じる額の評価にもっとも影響する指標です。 |
初回購入までの時間 | ゲームをインストールしてから、ユーザーが最初のアプリ内購入を行うまでにかかる時間。 | ゲームフローでのIAPのプレースメントとタイミングの設定に役立ち、他のマネタイゼーションモデルと併せたパフォーマンス向上の必要性を示唆する指標。 |
課金ユーザーの割合 | アプリのインストール後、一定の期間内にアプリ内購入を行ったユーザーの割合。 | さまざまなメディアソースによって生み出されたユーザーの質の評価と、マネタイゼーションモデルのパフォーマンスの計測に役立つ指標。 |
ROAS(Return of Ad Spend) | 広告費回収率。利益性の指標。一定の期間において、費やしたマーケティング費用を、ユーザーによって生成された収益で割って算出(例:7日目のROASが50%の場合、ユーザー獲得に費やした予算の50%に相当する収益がプレイヤーにより生成された)。 | ROASは、ユーザー獲得マネージャーの評価に使用されるもっとも重要な利益指標です。 |
アプリ内イベント計測
F2P(フリートゥープレイ)ゲームの世界では、インストール後の計測がユーザーフローを最適化する鍵となります。アプリ内イベント(ゲームチュートリアルの完了、特定のレベルの攻略、広告のエンゲージメント、購入など)の作成と配置を戦略的に行うことで、ゲームフローでのユーザーアクティビティについて多くの情報を得ることができ、それぞれのアクションが収益にどのように影響しているのかを判断することができます。
この知識を利用して、ユーザー獲得およびリエンゲージメントのキャンペーンを最適化し、収益を最大化するための決断が下せるようになります。
たとえば、2日以内にレベル10を攻略するユーザーのLTV(顧客生涯価値)が高くなると予測される場合は、2日以内にレベル10を攻略するユーザーをもっとも多く生み出しているメディアソースへの予算を多くすることができます。
計測項目
業界をリードするマーケターによってもっとも計測されているイベントをグラフにまとめました。アプリのサイズ(非オーガニックインストール数にもとづく)でグループ分けしています。このデータは、パフォーマンスの目標設定とマーケティング戦略策定での参考となり、デベロッパーがこれらのイベントをSDKに設定する根拠にもなります。
アプリ内イベントの選択と設計を行う際は、特定のイベントの頻度の計測だけでなく、イベントファネルのコンバージョン率を計測することを提案します。
その理由は2つあります。
- ゲームフロー内のイベントで収集するデータは、ユーザー獲得キャンペーンで役に立ち、価値の高いユーザーを頻繁に生成している/生成していないチャネルとソースを特定できます。これにより、ファネルの問題点をよく理解でき、必要であればユーザーとのリエンゲージメントを計画できます。
- イベントアクティビティデータをモニタリングすることで、製品のアップグレードのポイントを理解でき、その後のエンゲージメントの目標の基礎となります。
どれだけ計測するのか?
計測するべきイベント数は、アプリのサイズとゲームのジャンルによって大きく異なります。ゲームが大きくなれば、計画され計測されるイベント数も大きくなります。
ソーシャルカジノのような、IAPが主要なマネタイゼーション手段であるゲームジャンルでは、多くのイベントによってゲームフローとパフォーマンスを最適化できます。
一般的に大きなアプリほど、次のような特徴があります。
- チームが大きく、しっかりしたインフラがある。BIを利用し、データアナリストとデータサイエンティストがデータを分析し重要情報を抽出している。
- チームが広い知識と高い専門性を持ち、大規模のデータを扱う場合の粒度の細かな計測の重要性を理解している。
- 製品に厚みがあり、計測するイベントが多い。
アプリマーケターにとって、アプリ内イベントのデータは不可欠であり、多ければ多いほど良いと言えます。さまざまなイベントを計測しているほど、アプリのパフォーマンスは高くなりますが、大量のTノウハウが必要になります。
どの程度詳細に計測する必要があるか?
細かくユーザー行動を計測し、データを集計して分析することが、ユーザー獲得とエンゲージメントのすべてのチャネルにおいて下すマーケティング判断の基本になります。
データを細かく分析していくには、各アプリ内イベントに適切なパラメーターを定義することが重要なステップになります。こうすることでアプリ内イベントが「リッチ」になり、さらなる最適化とセグメンテーションが可能になります。
例:
単にレベルを攻略するユーザーを想定するのではなく、最高のレベルを攻略し、ハイスコアを獲得するユーザーを想定したとすれば、このデータはこれらのユーザーとのエンゲージメントに利用できます。オールスタープレイヤーにアップグレードしたことをそのユーザーに知らせれば、ロイヤリティの強力な推進要因になります。
アプリのインストール後1週間以内にレベル5を攻略するユーザーが高いLTVを生み出す可能性が高ければ、レベル攻略イベントに日付パラメーターを追加することで、そういったユーザーを増やすのに役立つ「リッチ」な情報が得られるようになります。
2回以上の、大きなアプリ内購入を行ったプレイヤー数を増やしたい場合は、購入イベントに収益と量のパラメーターを追加すれば、得られる情報が「リッチ」になります。
最終的に、こういったリッチなアプリ内イベントを計測することで、次のことができるようになります。
- 分析の深度が大きくなり、プレイヤーについての理解が深まる。
- 最先端のモバイルマーケティング機能を持つネットワークによる細かなセグメンテーションが可能になり、自社と自社のMMPのリアルタイムデータにもとづいて高度なオーディエンスベースのキャンペーンを作成できる。
アンインストール計測
AppsFlyerの調査によると、ゲームアプリの30日目のリテンション率は2021年に10%低下しています。アプリマーケティングの競争が激化しているため、アプリユーザーの維持が極めて難しくなっているのも無理はありません。さらにフリーミアムモデルが多く採用されているゲームアプリでは、ユーザーによる継続的な利用を確保することが成功に不可欠であり、それがなければ収益化は事実上不可能と言えるでしょう。
競争相手は数え切れないほどに増え、ユーザーの期待はますます高まるため、あらゆる面で優れ、迅速に配信をするアプリ以外は生き残ることすらできなくなります。
デバイスからのアプリのアンインストールは、そのユーザーにとってアプリに何らかの問題があることを明確に示しています。特にゲームアプリでは、アプリをアンインストールする理由、タイミング、ユーザーのタイプについて理解することが、アプリからの離脱を防ぐうえで極めて重要になります。
ストレージに長く保存もされず、競合も無数に存在するため、ゲームはアプリ業界でもっとも高いアンインストール率に悩まされています。
データからわかるように、ユーザーによるアンインストールの大半は1日目に発生します。アプリの内容が期待していたものと違っていたり、誇大広告だったりしたことが原因として考えられます。インストールしたゲームを使い続けるようにするためのエクスペリエンスを用意し、誇大広告を回避することが必須になります。
アンインストール計測に必要なセットアップ手順は、AndroidとiOSで大きく異なります。基本的な手順と各プラットフォームの違いについては、こちらをご覧ください。
広告収益の計測
モバイルが広く利用されるようになって以来、広告でのマネタイゼーションはさまざまな形態をとってきましたが、近年、アプリ内購入(IAP)、そしてアプリ内広告(IAA)は、モバイル向けカジュアルゲームの主要な収益源となっています。
ハイパーカジュアルゲームの成功により(英語)、大規模な広告マネタイゼーションが可能になり、IAAを収益源として利用できることがすべてのジャンルのゲームデベロッパーとマーケターに証明されました。IAAは、正しく適用されればユーザー体験の邪魔になることはなく、収益を増やすことを可能にします。
ゲームアプリに採用されているIAAはほとんどのマネタイゼーションモデル(英語)にとって不可欠なものであり、以前はIAPのみに集中していたデベロッパーにとっても新しい収益源になっています。IAAがあれば、通常、全ユーザーの約95%を占める無料ユーザーからのマネタイゼーションが可能になります。
ユーザーレベルでの広告収益データの重要性
IAAは主要な収益源になる可能性がありますが、詳細なデータがなければ、広告主によるマネタイゼーションの最適化は限定されます。
主な課題は、ユーザーによるアプリ内広告の扱い方についてのデータポイントがメディエーションプラットフォームによって異なり、ユーザーレベルのデータの解読が難しくなることです。
さらに複雑なことに、一部のネットワークは、収益データの平均と集計値を提供します。特定の広告プレースメントで生成された総収益を、その広告をクリックまたは見たユーザー数で割ったデータでは、正確なLTV(顧客生涯価値)やARPU(ユーザーあたりの平均収益)の算出に限りが生じます。
細かな収益計測が今までになく重要になっているため、一部のメディエーションプラットフォームは、デバイスIDまでの正確なユーザーレベルのデータ(ironSourceや、AppLovinのMAXなど)、およびインプレッションレベルの収益データ(MoPubや、AppLovinのMAXなど)を提供します。
このデータをMMPに渡すとデータが標準化され、マーケターは収益データを、各ユーザーの獲得に貢献したソースに正確に結び付けることができます。
その結果、全体的なLTVの数値を正確に得ることができ、的確な獲得予算を決定できます。そして、より効果的なリエンゲージメントキャンペーン(例:アプリ内購入するユーザーよりも、ヘビーユーザーに広告を見せる)が可能になります。
リエンゲージメント計測
モバイルゲームのマーケティングでのマーケターの仕事は、新規ユーザーの獲得に投資することに加え、離脱と常に戦い続け、オウンドチャネルと有料チャネルで既存ユーザーと離脱したユーザーとのリエンゲージメントを行うことです。
リマーケティングは、ユーザーをアプリに呼び戻す戦略で、主にショッピングや旅行などのIAPベースのカテゴリで使用されています。ゲームの世界でも、ユーザー獲得戦略で正しく採用されれば、リマーケティングは効果を発揮するかもしれません。
ところが、リマーケティングには大きな可能性があるにもかかわらず、ゲームのマーケターは、リエンゲージメント戦略を実施することに、いまだ消極的です。その理由は、リマーケティングのパフォーマンスを分析し、真にインクリメンタルな価値を特定するための計測ツールが十分にないためです(詳細については、以下をご覧ください)。
ゲームアプリのマーケターは、ほとんどの場合、既存ユーザーとのリエンゲージメントにオウンドメディアを使用します。プッシュ通知は、ユーザーに煩わしく思われることが多く、慎重に利用する必要があります。クロスプロモーションの実施は概ね簡単ではありますが、大規模なゲームポートフォリオを持つ企業でないと実施できません。
これに該当すれば、クロスプロモーションは、ユーザーを1つの傘の下に留めておくのに役立ちます。そうすることで、すでにエンゲージメントのあるユーザーに働きかけて、新しいゲームやパフォーマンスの低いゲームへと意識を向けてもらうことができます。一部のアドネットワークは、クロスプロモーションキャンペーンを実行し、標準のユーザー獲得と類似の方法で結果を最大化するための専用ツールを提供しています。
M&Aがゲーム業界におけるクロスプロモーション手法に与えている影響については、当社のブログをご覧ください(英語)
ゲームアプリ業界がリマーケティングに投資するべき4つの理由
1 – ユーザー獲得コストの増加
実際のところ、新規ユーザーの獲得コストは、既存ユーザーとのリエンゲージメントにかかるコストより5~10倍高くなります。
2021年にはゲームアプリによるユーザー獲得に145億ドルが使用されており(中国を除く)、世界の予算の半分を米国が占めています。プライバシーポリシーの強化は、iOSでの前年比13%の減少につながっています。Androidでは35%増加したため、全体で18%の増加となっています。
2 – 高度なセグメンテーションツールの登場
ますます高度になるセグメンテーションツール(英語)を利用して、マーケターがアプリ固有のオーディエンスセグメントへの絞り込みを行い、もっとも大きな収益を生成しているユーザーや離脱しやすいユーザーについて情報を得ることができるようになっています。
3 – パフォーマンス
以下のデータが示すように、特にゲームアプリでは、有料ユーザーからの収益がリマーケティングにより大幅に増加しています。
4 – 計測のためのコントロールグループの活用
増分の計測には、常にコントロールグループが必要です。ゲームには、自然に発生するリエンゲージメントの段階があります。リマーケティングの効果の計測には、比較のためにコントロールグループを使用すると有益です。
リエンゲージメント戦略を強化するためのヒントについては、当社のガイドをご覧ください(英語版)または、こちらから、リマーケティングキャンペーンの正しい設定方法をお読みください。
SKANでの計測
StoreKit Ad NetworkはAppleによって運用されているプライバシーに特化したAPIで、SKAdNetworkまたはSKANとも呼ばれています。アドネットワークや広告主は、このAPIを使用して、広告アクティビティ(インプレッション、クリック、アプリのインストールなど)を集約レベルで計測できます。SKANは、いわば昔ながらの町の保安官のようなものです。
14.5以降のバージョンのiOSでは、大半のユーザーが自身のユーザーレベルのデータへのアクセスを拒否しているため、Android以外のキャンペーンを計測するにはSKANを使用するしかありません。
SKANでは、データプライバシーとマーケティング計測のバランスをとるための完全に新しいメカニズムが導入されており、iOSキャンペーンの効果の評価に、高機能のタイマーメカニズム、複雑なプライバシーしきい値、独自のコンバージョン値システムが採用されています。
コンバージョン値の仕組み
コンバージョン値とは、アプリインストール後に発生したアプリ内行動をインストールにひも付けるためのものです。コンバージョン値の設定は、アプリデベロッパー側で行えます。Appleはアドネットワークと広告主に1回だけポストバックを送信しますが、この1回限りのポストバックにコンバージョン値が1つだけ含まれます。
コンバージョン値に含まれる情報は、アプリインストール後にユーザーが行った行動(ユーザーが「トラッキング」を拒否していると想定)を知る唯一の情報源となるため、コンバージョン値はとても重要な役割を持っています。結局のところ、フリーミアムモデルが採用されているアプリを最適化するには、インストール後のデータが必要になります。
コンバージョン値は、6ビットで定義されており、2進法を使います。ビットのON/OFFの状態を「0」と「1」の2つの数字を使って表現します。6ビットで0~63までの合計64種類の組み合わせを作り、コンバージョン値を計測できます。
64種類と聞くと限定的に感じるかもしれませんが、収益、エンゲージメント、マーケティングファネルの行動段階など、幅広く計測することができます。
コンバージョン値を内部ロジックに従って適切にマッピングすれば、この値を思い通りに使用できます。この値は、アプリにとってもっとも重要なKPIにもとづいて、自由に使い道を決められます。
64種類の値は、アプリデベロッパーまたは広告主によって、それぞれデコードする方法が個別に設定され、アプリのインストールに貢献したキャンペーンに成果をひも付けて、最適化をはかります。
さまざまな業界のマーケターは、コンバージョン値のスキームをどのようにマッピングしているのでしょうか?
AppsFlyerのConversion Studio(英語)で得られたデータを分析すると、ゲームアプリでは収益に的が絞られていることがわかります。つまり、ほとんどのコンバージョン値のスキームで使用されているのはこのモデルです。ゲーム以外のアプリの設定でもっともよく使われているのは、アプリ内アクティビティです。
アクティビティ期間のタイマーのベンチマーク、64種類の組み合わせの最適な使用方法など、コンバージョン値を活用する方法を見るには、こちら(英語)をクリックしてください。
SKANでの計測項目
ゲームアプリでは収益を重視
AppsFlyerのTikTokに関する最近のレポートによると、84%のゲームで収益が設定に利用されています。その理由は、ゲーム(特に、人気の高いカジュアルゲーム)では、他のカテゴリと比べて初回購入までの時間が短いことです。
特にハードコアゲームでは、93%が収益に的を絞っています。これらのゲームはアプリ内広告ではなくアプリ内購入に大きく依存していることを考えると、驚くことではありません。
ソーシャルカジノアプリでは、23%がファネルイベントと収益を設定に使用しています。
ソーシャルカジノアプリは、高価値行動の兆候を示すパターンを早期に特定できる、もっとも売上の高いアプリカテゴリの1つであり、その5分の1以上でこの組み合わせが計測に使用されています。
ハードコアゲームアプリとカジュアルゲームアプリに見られる相違
経験から言うと、ハードコアゲームアプリでは、SKANのビットの大半がイベント計測に使用される傾向があります。
その主な理由は、これらのタイプのアプリは他のゲームカテゴリと比べてより複雑なゲーム体験を伴い、リテンションサイクルが長く、より多くのアプリ内収益を生み出すヘビーユーザーを獲得できることです。そのため、イベント計測を行うことでユーザーのLTVを予測できます。
一方、カジュアルアプリには、より短いユーザーライフサイクルを示す傾向があります。アプリ内イベントとIAAによる収益への依存度が高いため、通常は、イベント計測と収益計測の組み合わせに的が絞られます。
SKANでの計測量
インストール後のアクティビティを計測する方法は64種類のみであるため、これらをすべて使用することを強くお勧めします。幸い、ゲームアプリのマーケターはデータにもとづく高い専門知識を持ち、変化にすばやく対応できることがよく知られています。
その裏には、この業界の競争力の熾烈さがあります。ゲームアプリでは、すでに可能な限りのコンバージョン値を利用しているマーケターの割合が63%に上るのに対し、ゲーム以外のアプリでは40%程度にとどまっています(80%以上に上るフード&ドリンクアプリは例外)。
さらに、ハードコアゲームとミッドコアゲームではファネルがより複雑なため、ハードコアゲームでは74%、ミッドコアゲームでは76%のマーケターが60~64種類のコンバージョン値を利用しています。
ゲームアプリでSKANポストバックが送信されるタイミング
大多数のアプリでは、データを収集するアクティビティ期間としてデフォルトの24時間が利用されていますが、これはSKAdNetworkの使用の成熟度が高まるにつれて変化すると考えられます。
デフォルトのアクティビティ期間は24時間ですが、データは一度しか収集できないため、意図的なトレードオフが行われることを覚えておく必要があります。アクティビティ期間が短くなるとデータ収集にかかる時間も短くなりますが、獲得できる情報量は限られます。
期間が長くなるとより多くのデータを収集できますが、データへのアクセスは遅くなります。
さらに、ユーザーによってはタイマーを延長できないため、タイマーを延長しても一部のユーザーにしか適用されないことに注意が必要です。タイマーを延長する唯一の方法は、コンバージョン値を更新することです。コンバージョン値の更新は、アプリを開いたときにのみ行われます。
SKANを最大限に活用する10の方法
SKAdNetworkに確実に対応するためのいくつかの方法を紹介します。
1 – データの集約
各アドネットワークからSKANの全情報を収集します。
2 – データの検証
すべてのポストバックがAppleによって署名されていること、伝送過程で不正な加工が施されないことを保証します。これに確実に対処するには、信頼できるMMPとの連携が必要です。
3 – データの強化
SKANの情報をインプレッション、クリック、コスト、オーガニックトラフィックなどの他のデータポイントと照合し、完全なROI分析を行います。
4 – データの有効化
SKANのデータを広告主が利用しやすいように、専用の管理画面やAPIなどの便利な仕組みを提供します。
5 – シームレスな連携
モバイル計測ソリューションでプロセスを完全にカプセル化し、広告主での特別な対応はほぼゼロにします。特に、SKANプロトコルの変更にも対応します。
6 – コンバージョンイベント
サーバー側で動的かつ柔軟なアプリ内イベントの計測を行うことをお勧めします。使いやすいツールを利用してコンバージョン値をマッピングし、頻繁に更新して、開発に不要な時間を費やすことなく、64種類のコンバージョン値を最大限に活用してください。
SKANキャンペーンで使用できるコンバージョン値は64種類と聞くと限定的に感じるかもしれませんが、ビットを適切に割り当てて活用すれば、幅広い値を計測できます。範囲と組み合わせを最大限に活用して、もっとも重要なインストール後のアクションに的を絞ります。
適切なマッピングが見つかるまでテストを繰り返すことが必要です(UIを使用することでテストが容易になります)。
7 – ファネル計測
SKANの導入からまだ日が浅いためか、ファネル構成はビットの割り当てをもっとも効率的に行うことができる方法であるにもかかわらず、この方法を十分に活用している広告主は多くありません。ファネル構成では、3つの個別のイベントを計測するためだけに3ビットを使用するのではなく、1ビットのみを使用して連続した行動を計測できます。
8 – 予測分析
時間制限の問題を解決し、初期に発生したエンゲージメント行動を収集して、広告キャンペーンのパフォーマンスを長期的に予測するために使用します。SKANでモバイルアトリビューションを自動的に計測して、計測されるデータや計測時間の制約を取り払うことによって、この新たな現実の中で競争優位性を維持および強化できます。
ポストバックタイマーによって、ユーザーのLTVの予測のために収集できるデータの量が制限されることにも注意してください。予測モデルを利用することで、もっとも収益性の高いユーザーを効果的に特定するための指標と行動を特定できます。
予測メリットスコアに6ビットすべてを使用してスコアを伝達することもできますが、特定のコンボを使用して有益なユーザークラスターを示すこともできます(SKANから返されるときに集約形式で提示されます)。
9 – 不正
新しいiOS 14エコシステムでは、あらゆるタイプの不正からデータを安全に守る必要があります。MMPは、キャンペーンのパフォーマンスに関する正確なデータを入手できるようにして、SKANでの不正からの保護を提供します。
構造上の欠点、データの制約、レポートに潜む落とし穴に対してエンドツーエンドの解決策を提供し、インストール前からインストール後までの広告費を守ります。
10 – データの重複排除
AppsFlyerのデータによると、主に非SRNキャンペーンを行う広告主の場合、SKANのインストールの約62%が重複しています。一方、主にSRNキャンペーンを行う広告主の場合、SKANのインストールの重複率は約18%です。iOSデータには重複排除が欠かせないと言わざるを得ません。
信頼できる唯一のデータソース(Single Source of Truth)と、それがデータおよびコスト分析にどう影響するかについては、こちらをご覧ください。
適切かどうかの確認
クリエイティブ
パフォーマンスマーケティングは自動化が進みマシンドリブンな領域になりつつあります。そのため、クリエイティブは2022年のマーケティングの中心的役割を担うことになり、その重要性は軽視できません。
クリエイティブはマーケティングパフォーマンスを大きく左右し、費用の最適化においても重要な役割を担います。しかし、もっとも重要なのは、クリエイティブがユーザー体験に影響をもたらすことです。
モバイルゲームの種類が豊富になりすぎ、広告キャンペーンが活発になりすぎると、ユーザーをうんざりさせてしまう可能性があります。特に、動画インタースティシャル広告や動画リワード広告には注意が必要です。
入札単価が高ければ高品質の広告スロットを購入できるかもしれませんが、インストールが保証されるわけではありません。そして、ここがクリエイティブの力の見せどころです。
多くの場合、広告がユーザーに表示されるのは、5秒(インタースティシャル広告)から30秒(動画リワード広告)です。つまり、そこでエンゲージメントを勝ち取るには、クリエイティブとプレースメントが重要になります。
ゲームのクリエイティブフォーマット
バナー
通常、ゲーム画面の下部に配置されるバナーは、モバイル広告エコシステム全体でもっとも一般的な広告形式です。静的広告と低品質の動画広告を表示でき、表示回数は非常に多くなるものの、エンゲージメント率は低くなる傾向にあります。このような安価な広告はエンゲージメントの点では有益ではないかもしれませんが、ブランドの認知度を高める効果があります。
インタースティシャル広告
インタースティシャル広告は、ゲームのさまざまなステージで表示され、ゲームフローを中断するため、より煩わしく思われます。快適なユーザー体験を維持し、離脱率が高くならないようにするため、デベロッパーとマーケターは、インタースティシャル広告のプレースメントとタイミングを賢く設定する必要があります。
動画リワード広告が一般的になる前は、インタースティシャル広告が最高の収益を提供する広告でした。開始5秒後にユーザーが広告をスキップできるタイマーを提供していたため、広告主は5秒間でユーザーの心を掴むクリエイティブを作成する必要があり、広告主の悩みの種となっていました。
ゲームフローを中断するだけでなく、正確なタイミングを設定するのが難しいため、インタースティシャル広告のCPIとエンゲージメント率は、より新しい広告である動画リワード広告より低くなっていました。
動画リワード
手堅いリターンを提供することが知られている動画リワード広告は、ゲーム内のリワードと引き換えに30秒以内の動画を見せるものです。ユーザーの行動を阻害したり、不意を突いて表示されたりしないため、より良いユーザー体験を提供し、インストールの増加とエンゲージメント率の向上につながります。
このようなリターンが得られるため、広告主が動画リワード広告キャンペーンに支払うCPIのほうが高くなるのは当然と考えられます。
プレイアブル広告
これは、ここ数年で一般的に使用されるようになった、確実な成果をもたらす新しいジャンルの広告(英語)です。プレイアブル広告は、ゲームを実際に体験してもらうことで、ファネルから離脱する可能性が低い、質の高いユーザーのエンゲージメントを促進します。
しかし、プレイアブル広告の作成には、ミニゲームの作成とほぼ同程度の大きなリソース、つまりデザイナー、デベロッパー、QAなどの関与が必要になります。そのため、投資額が大きくなり、成功も保証されません。しかし、プレイアブル広告が効果を発揮すれば、大きな成果が期待できます。
オファーウォール広告
もっとも複雑なフォーマットであるオファーウォール広告は、マネタイゼーションが可能なゲームフロー内にユーザーをとどめておくことができます。
一方で、オファーウォール広告では離脱率が高くなり、マーケターがLTV/CPIの健全なバランスを維持するのが難しくなることもあります。そのため、多くの広告主が、CPA(アクションあたりのコスト)キャンペーンの追加のチャネルを展開することを選択します。
このように、異なるアクションに対し異なる価格を設定する必要があるため、価格設定のための別のレイヤーが作成されています(たとえば、ゲームのインストールとチュートリアルの視聴に対し、ゲームのインストールやレベル10の達成と同じ方法で価格が設定されることはありません)。
ネーミング規則
キャンペーンでは、ネーミング規則で工夫するとAPIでは得られないような情報の収集が可能になることがあります。
ほとんどのユーザー獲得マネージャーはすでにこのテクニックを知っており、BIで利用できるような内部ネーミング規則を採用しています。ネーミングの際には、メタデータをアンダースコア ” _ “で区切って配置します。このメタデータを、データのディメンションとしてプロットし、洞察に満ちたデータビジュアライゼーションレポートを完成できます。
例:
- [キャンペーンタイプ]_[プラットフォーム名]_[価格モデル]
- [地域]_[メディアソース名]_[キャンペーン開始日]
結果として、MMPの管理画面や、Excel、BIプラットフォームを使用する際に、さまざまなキャンペーンのセグメント、地域、プレースメント別のパフォーマンスについてすぐにレポートを作成し、フィルタリングと分析を行うことができます。
ネーミング規則の利点でもっとも重要なのが、キャンペーンの作成時にすべての要素について考慮し、実施する可能性のある分析を踏まえて、必要に応じて一歩先を考えられるようになることです。
現在、この種のパフォーマンス指標をクリエイティブにも設定するのが一般的な方法と考えられています。かつて面倒だったプロセスは今では簡単になり、クリエイティブのテーマ、方向性、サイズ、動画の長さ、ユーザーの疲労、および「新鮮さ」の分析は比較的簡単に行えます。
クリエイティブの計測には、広告タイプ、広告サイズ、広告の秒数、ボタンの色などの特徴を次のようにキャンペーン名に追加します。
geo_media source_campaign start date_rewarded_video_30seconds
[地域]_[メディアソース名]_[キャンペーン開始日]_[リワード]_[動画]_[秒数]
ディープリンク
アプリマーケティングの技術スタックでも最強のツールの1つと言われるディープリンクは、コンテキストに合わせたユーザー体験を、チャネル、プラットフォーム、デバイス全体で構築します。
ゲームにおいてユーザー獲得を促進しエンゲージメントを高めるための重要な方法であるユーザー招待は、ディープリンクによってさらに便利なツールとなります。
もう1つの一般的なユースケースは、既存プレイヤーが「実績を共有」またはゲームに「友達を招待」したい場合です。これらのプレイヤーは、ソーシャルメディア、SMS、メールなど、招待チャネルを選択できます。その後、ディープリンクが自動生成され、簡単に共有できます。
招待状が送信されると、マーケターはそれをユーザー行動として計測できます。どのユーザーが、どのチャネルで友人を招待する可能性が高いかなどを理解することで、将来のマーケティング活動を最適化できます。
ディープリンクの使用を開始するには、まず設定が必要です。ありがたいことに、採用する方式に応じてアプリにコードを実装するか、関連するドメインを有効にするだけで簡単に設定できます。
ユーザーは以下の設定に応じて誘導されます。
- ディープリンクの対象となるキャンペーンの目標
- 事前に収集したユーザー情報の利用許諾(コンテンツの閲覧、購入履歴、ロケーションなど)は事前に許可を得て理解を得る必要があります。
スマートバナー – 高度なディープリンク戦略
スマートバナーに設定されたディープリンクを使って、ユーザーに新しいアプリのインストール、特典の使用、友人への招待の共有、チェックアウトページでの注文などを促すことができます。
ユーザーがスマートバナーのポップアップをクリックしてアプリ内の関連する場所に誘導されると、そのユーザーのその後のアプリ内アクティビティ、レベルのID、閲覧したカテゴリページのほか、履歴をさかのぼって、ユーザージャーニーからのアトリビューションデータも取得できます。
スマートバナーは貴重なデータを収集するほか、ユーザー体験の向上(英語)に寄与し、ブランドロイヤリティやエンゲージメント全体のポテンシャルを高めます。
ディープリンクソリューションを選択すると、事業成長のニーズが下支えされるのはもちろん、プライバシーやセキュリティに関する最新のガイドラインと連動し、最新のユーザーのプライバシーやセキュリティ関連規制に遵守してキャンペーンを運営できます。
オウンドメディア
オウンドメディアとは、企業が直接管理するマーケティング資産のことで、アクセスや利用に追加コストをほとんど必要としないものを指します。モバイルのリエンゲージメントでは、プッシュ通知、メール、SMSメッセージがもっとも利用されていますが、オンラインセミナーとツイートも利用されています。
オウンドメディアを使用すると、アクティブなユーザー、アイドル中のユーザー、失効したユーザーのエンゲージメントの向上を目的として、コンテキストに合わせた無料のコンテンツを作成できます。ユーザーレベルのデータを取得することが難しいユーザープライバシー重視の時代において、このようなつながりは極めて重要です。
興味深いことに、広く使われているにも関わらず、オウンドメディアチャネルによって確保できる長期的な価値を、多くのマーケターは十分に認識していません。
オウンドメディアを活用すべき理由
- マーケティングの「階層」の利用 – オウンドメディアチャネルは、有料キャンペーンと比べるとコストをほとんど必要としないため、それが可能であり適切である限り、これらのチャネルを介したユーザーのリエンゲージメントに重点を置き、優先する必要があります。
- コンテンツのあらゆる側面を自由に設定できます。
- 無料 – 作成に使用した内部リソースは除きます。
- 低リスク – 有料メディアでは、キャンペーンが成功しなかった場合には予算が無駄になります。アーンドメディア(オンラインでの口コミと同義)では、コメントや潜在的な不正確さを管理できません。オウンドメディアでは、これらを完全に回避できます。
- コンテキストへの適合 – オウンドメディアでは、アンインストールや休眠を含む、ユーザージャーニーの各段階に対応するコンテンツ戦略を構築できます。
オーディエンスのセグメンテーション
どのモバイルカテゴリでも、オーディエンスを理解することは重要です。セグメンテーションを行い、効果的な広告を配信することで、エンゲージメントを促進できます。また、エンゲージメントを起こしそうにないユーザーに対して費用を無駄にすることもなくなります。
価格はセグメントによって異なり、セグメントの組み合わせ方によっても異なります。すべての経済システムと同様に、価格は需要と供給によって決まります。広告主は、ファネルの後半に広告費を超える利益([LTV] > [CPI])を生み出すような質の高いユーザーを得るために、より多く支払うことになります。
ゲームアプリのオーディエンスのセグメンテーションにおいて、もっとも一般的な方法は次のとおりです(iOS 14以降のユーザーの場合、これらのセグメンテーションは同意しているユーザーにのみ適用されることに注意してください)。
- 地域
国、州、都市、特定の郵便番号などの情報がなければ、地域別のマーケティングを行うことはできません。
- 人口統計
性別、年齢、収入。たとえば、年収が20万ドル以上で50歳以上の男性ユーザーなど。
- サイコグラフィック
価値観や関心。たとえばニュースアプリやコンテンツを日常的にインストールして利用するユーザー。
- テクノグラフィック
すべてのモバイルデバイスの細かな技術情報。たとえば、少なくとも6GBのRAMを搭載したデバイスを持つiOS 12以降のユーザー。
- プラットフォーム
iOSまたはAndroid。これら2つのプラットフォームは、KPIと価格設定において異なる動きをします。
- 行動
ユーザーが実際に携帯電話で、何をどのくらいの期間、どの程度行ったか。たとえば、1回のセッションで20分以上ゲームを利用し、定期的にアプリ内購入を行う傾向があるモバイルゲーマー。行動セグメントの多様性は非常に大きく、複数のアクティビティが混在している場合があります。
- 広告プレースメント&クリエイティブ
それぞれのプレースメントに、エンゲージメントの利点と独自の機会があるため、価格も広告プレースメントによって変動します。
メディアソースの選択
アドネットワークを含むすべてのチャネルでのメディアソースの選択は、簡単ではない大きな決断です。
最低価格で夢のような規模を提供するメディアソースが多いものの、すべてを提供できるメディアソースはなかなかいないのが実情です。メディアソース間の競争は激しく、誇大したサービス内容が謳われることもあるため注意が必要です。最善の結果を得るためのベストなメディアソースの組み合わせを見つけることがマーケターの仕事です。
複数のメディアソースを利用することで、ビジネスモデルごとのユーザー獲得パフォーマンスを評価することもできます。複数を比較することで、適切な価格と量でKPIを達成してくれるメディアソースに照準を合わせやすくなります。
利用するネットワーク数が少ないと、新しいオーディエンスセグメントにリーチしにくくなるかもしれません。また、マーケティング戦略を活かすためのテクノロジーを十分に利用できなくなる可能性があります。
実質的には、利用するネットワークが増えれば、トラフィックへのアプリの露出も増えます。とは言え、トラフィックへのアプリの露出が必ずしも規模の拡大につながるわけではありません。
結局のところ、プレイヤーになる可能性を持つユーザー数には限りがあります。不正のリスクが高まり、運用効率が落ちる可能性もあるので、規模を大きくすることが予算と手間を投じるのに値しないこともあります。
重要なのは、メディアソースの質とパフォーマンスの実情を常に把握しておくことです。これは、マーケターの手間を最小限に抑えるためにMMPが行うべきタスクです。
ゲームだけに着目すると、実際には正反対の傾向が見えてきます。大きなアプリほど、利用しているメディアソースが少ないことです。これは、大規模ゲームのマーケターが、どのメディアソースがもっとも効果的かを熟知し、賢く予算を分配して品質と量の絶妙なバランスをとっているためです。
地域ごと、ゲームジャンルごとのネットワークのランキングを確認するには、当社のパフォーマンスインデックスをご覧ください。
ATTオプトイン率の向上
ATTの導入から1年が経過した今、ポップアップが表示されたユーザーが、ほぼ2回に1回の割合で[Allow](許可)ボタンをクリックするようになっています(Appleでは、追跡型広告の制限(LAT)を有効にしているユーザーと「Restricted(制限あり)」のユーザーにはポップアップが表示されないようにしています)。
IDFA共有を許可したユーザーの割合(あらゆるATTステータスを考慮)とIDのマッチング率(広告主とパブリッシャーの双方の同意が必要)が下がっても、IDFAは引き続き利用できます。
実際に、マーケターが同意のないオーディエンスに対して行うベンチマーク、モデリング、推定では、依然としてIDFAコホートが有益です。
データからわかるように、大半のゲームアプリでは、同意しているユーザーのセグメントを確立することの重要性が認識されています。
一部のユーザーとの関連性を想定した文言を含むポップアップの表示には、ユーザー体験に対する潜在的なリスクがあります。それにもかかわらず、5分の4のアプリでは、ユーザーに対してATTポップアップを表示することが決定されています。ゲームアプリの現在のオプトイン率は46%です。
実際には、ポップアップを表示することによって得られるメリットが、表示しないことによって得られるメリットを大幅に上回ることは確かです。
常に時代を先取りするには、次に示す2つの実証済みの戦略によって、アプリのATTオプトイン率を向上することが必要です。
1 – タイミングが重要 – 1回目の起動時にポップアップを表示する
AppsFlyerのデータは、ユーザーが初めてアプリを起動するときに同意率がもっとも高くなることを明確に示しています。これは、起動時にユーザーに対して表示される他のプッシュ通知でも同じです。全般的には、1分後から120分後までの間に同意率が30%低下します。インストールから数時間、数日が経過すると、同意率はさらに低くなります。
1分後の同意率が高いカテゴリとハードコアゲーム(50~100分後)では、IDFAの収集とアトリビューションプロセスのタイミングにずれがあるため、このような差が生じると考えられます。
アトリビューションプロセスがIDFAの収集前に生じると、ATTのステータスは「Not Determined(未決定)」として記録されます。アプリの所有者はSDKによってIDFAが収集されるタイミングを設定できるため、この設定が同意のフローと一致していることを確認する必要があります。
さらに、IDFAを使用してアトリビューションが発生する場合、初回の起動時にIDFAを収集することが重要です。MMPのSDKは「待て」ができるため、マーケターは、MMPのサーバーにデータが送信される前に、SDKによるATTのステータスの記録を保留する時間を設定できます。
2 – まだ同意していない、エンゲージメントの高いユーザーに対して、ATTポップアップの後にプッシュ通知を表示する
ATTポップアップが表示されたときにユーザーが同意を示さなくても、これで終わりではありません。これらのユーザーは、デバイスの設定でいつでもトラッキングを有効にすることができます。
ところが、ユーザーはおそらくそのことを知りません。そのため、リマインダーを送信することをお勧めします。ATTポップアップの前に自社のポップアップを表示するのと同様に、エンゲージメントの高いユーザーに対し、ATTポップアップの後にオプトインがユーザーにもたらすメリットを示す通知を表示して、ユーザーが設定でアプリをオプトインするように促します。
データによると、7日目にオプトイン率が上昇しているゲームアプリはわずか17%です。しかし少なくとも、まだ同意していない、エンゲージメントの高いユーザーに対して、ATTポップアップの後にプッシュ通知を表示する手法を試してみる価値はあります。
ATTに関連する最近のトレンドについては、当社のレポートをご覧ください。
予測モデル
モバイルゲーム広告戦略(英語)が洗練されるほど、予測モデルを採用する必要が大きくなります。予測モデルでは、履歴データを活用して正確な予測を行います。
最近ではユーザーレベルのデータへのアクセスがかつてないほど難しくなっており、予測モデル(英語)によって戦略の成功と失敗が分かれることがよくあります。
とは言え、確実な予測モデルを作成することは簡単なことではありません。確固たる目標、徹底したデータ指向、そして十分な知識が必要です。
予測モデルは、次の2つの重要なアクティビティで効果を発揮します。
1 – ユーザー獲得
ポテンシャルの高いユーザーと低いユーザーを区別する典型的なユーザー行動を理解し、その分岐点を早く把握することができれば、適切なユーザー獲得予算を作成できます。
たとえば、インストール後180日目以降に利益をあげるユーザーは、3日目までにXを生成していなければならないということがわかっている場合、その数値がベンチマークより下であれば、入札単価、クリエイティブ、セグメンテーションなどを調整して獲得したユーザーのコストや質を改善するか、マネタイゼーション戦略を改善する必要があることがわかります。
数値がベンチマークを超えている場合は、自信を持って予算と入札単価を引き上げて、特定のソースからさらに質の高いユーザーを獲得できます。
2 – リエンゲージメント
ポテンシャルの高いユーザーが早い段階で(支払いの観点から)成果を上げていない場合は、有料チャネルまたはオウンドチャネルのリエンゲージメントをそれらのユーザーに集中させ、その支払いの金額と頻度を増やすように働きかけます。
リスクのあるユーザーを特定した場合は、ユーザーが離脱するより前にリエンゲージメントを働きかけることができます。または、長期的なエンゲージメントの可能性が非常に低いことをデータが示している場合は、有料キャンペーンの対象からそのユーザーを除外してしまうことで、その後の損失を最小限に抑えることができます。
予測モデルは、次のデータポイントを持つ複数のレイヤーで構築されています。
従来の指標
これらの指標は簡単に利用できるものの、実際の利益との相関がかなり低い指標です。
初期指標
- インストールあたりのコスト(CPI)
- リテンション率
予測モデルでの一般的なKPI
第1予測因子
- 広告費回収率(ROAS)
- 顧客生涯価値(LTV)
第2予測因子
それぞれのアプリとチームによって、予測モデルのデータポイントに影響するパラメーターと考慮事項が異なります。
- 顧客獲得費
- 時間ベースのコストまたは主要なアクションのコンバージョン(例:1日目にプレイされたゲーム数あたりのコスト、または最初のセッション中のコンテンツのビューあたりのコスト)
- X日目の保持ユーザーあたりのコスト:[1日あたりの総費用] x [その日の保持ユーザー数]
- カテゴリ別のアプリ内イベント:例 – チュートリアルの完了、1日目でのレベル5の攻略
データプライバシー時代の予測モデルについては、当社のガイドをご覧ください。
マーケティング分析
セットアップが完了し、データインフラが整ったら、準備は完了です。結局のところ、セットアップは手段にすぎず、すべてのデータを自由に使えるようにして、役立つ情報を引き出せるようにすることが目的です。
そこで重要なのがマーケティング分析です。ゲームアプリのマーケティング分析で重要なレポートは、コホート&リテンション、広告収益、LTV、広告費&ROASの4つです。
それぞれ詳しく触れていきましょう。
コホート&リテンション
パフォーマンス指標とKPI(英語)に対する重要な情報を提供し、マーケターが特定セグメントのユーザー(コホート)の行動を経時的に確認することを可能にする、基本的な分析です。
ユーザーリテンション
モバイルマーケターがもっとも重要視するKPIの1つです。その理由として、新規ユーザーの獲得には、アクティブユーザーの維持よりもはるかにコストがかかることがあります。マネタイゼーションの基盤であり、予測モデルにおいても重要因子であるリテンションは、ゲームなどの非常にアクティブで中毒性のあるアプリカテゴリでは特に重要です。
ただし、リテンションからわかるのは、設定された期間にアプリを起動し、その後もアプリを開いたユーザー数だけです。次にコホート分析について詳しく説明します。
コホート分析
マーケターが新しいキャンペーンのパフォーマンスと掲げる目標を比較し、結果に応じてとるべき今後の戦略を検討することを可能にします。コホート分析を行うには、共通の特性を持つユーザーをグループ化し、異なる時間枠で特定のKPIを計測できるようにします。
コホート分析レポートからアプリ内収益と広告収益の両方の収益源に関する情報を得ることができます。「どのメディアソースがアプリ内購入をもっとも促進したか」、「メキシコでユーザーあたり最大の収益を達成したキャンペーンはどれか」などの質問に答えることができます。
複数のKPIを並べて戦略の効果を評価するには、コホート分析が必要です。
次の例では、予め設定されている2つの指標、ユーザーあたりの平均セッション数とユーザーあたりの平均収益を見ることにします。ユーザーあたりの平均セッション数からは、次のことがわかります。
最初に、春のキャンペーンが日本と韓国で極めて好調で、中東とインドではいまいちなのがわかります。しかし、このデータでは全体像がわかりません。日本と韓国ではエンゲージメントが高いことがわかりますが、それだけでキャンペーンが一番成功したと言えるのでしょうか?
そんなことはありません。データ表示をユーザーあたりの平均収益に切り替えると、日本と韓国のユーザーはキャンペーン中には活発ではあったものの、一切お金を使っていないことがわかります。一方、中国のユーザーはアクセスあたりの平均支出が高くなっています。
結論として、日本と韓国の市場に対しキャンペーンを最適化する余地があることがわかりました。中国のユーザーは4日目で購入が停滞しているので、その前後でリマーケティングのキャンペーンを行っても良いかもしれません。理想とするのは、購入率が順調な右肩上がりを見せているインドのユーザーです。
広告収益
アプリ内広告(IAA)キャンペーンに投資する場合、広告収益レポートによって、獲得したユーザーによる広告費回収率(ROAS)の全体像を理解できます。
次の例を見てみましょう。3人のユーザーが2021年12月31日にアプリをインストールし、次のようなアトリビューションが行われました。
ユーザーA:ネットワークA
ユーザーB:ネットワークB
ユーザーC:オーガニック
アプリは5つの異なるマネタイゼーションプラットフォームと連携しています。各プラットフォームは、次のような固有のアプリ内イベントを使用します。
Facebook Audience Network:fb_ad_view
Chartboost:chartboost_ad_view
Admob:admob_ad_view
Applovin:applovin_ad_view
IronSource:is_ad_view
インストール後、ユーザーには次のように4日間広告が表示されます。
ユーザー獲得の観点から、ネットワークAから獲得されたユーザーAは、広告とのエンゲージメントだけで4ドルの収益を生成しました。全体的なLTVの観点では、1人のユーザーによって生成された総収益(IAAとIAPの両方を組み合わせて)を理解することは非常に重要です。
そのユーザーが4日間で2ドル相当の購入をした場合、合計収益は6ドルになります。特定のメディアソースから獲得した特定のユーザーが特定の広告収益を生み出すことがわかれば、アプリマーケターによるユーザー獲得ソースの選択がはるかに正確になります。そして、既存ユーザーに対するキャンペーンや広告の最適化も行えます。
たとえば、広告とのエンゲージメントを一切しないユーザーを除外し、広告から大きな収益を生み出すユーザーにボーナスを与える方法があります。
もう1つの例では、キャンペーンマネージャーがメディアソース1の広告に88,593ドルを費やし、58万6,000人以上のユーザーを獲得しています。これらのユーザーはアプリ内広告をクリックし、いくらかの収益をもたらしていますが、非常にゆっくりと安定した増加であることがわかります。
一方、メディアソース2は、ユーザー獲得のコストが大幅に低く、アプリ内広告からより多くの収益をもたらしています。そのため、インストール後7日目までには、メディアソース2がメディアソース1よりもはるかに損益分岐点に近くなっています。
LTVレポート
顧客生涯価値(LTV)は、アプリマーケティングの中心にあるKPIです。ユーザーが生涯にわたって生成した収益を正確に把握することで、ユーザー獲得、エンゲージメント、リテンション(英語)におけるマーケティング投資を判断できます。LTVはまた、マーケティング投資がプラスのROIをもたらす度合いを計測するために不可欠です。
LTVレポートは、全体的なパフォーマンスにもとづき、さまざまなユーザーがビジネスにとってどれほど価値があるかを評価し、比較するのに役立ちます。
たとえば、メールまたは有料検索で獲得したユーザーのLTVを比較し、そこから各グループのユーザー獲得予算を決定できます。
また、さまざまな方法で獲得したユーザーについて、LTVを比較することもできます。たとえば、オーガニック検索で獲得したユーザーとソーシャルで獲得したユーザーを比較したり、価値の高いユーザーをもたらす方法としてソーシャルとメールを比較したりできます。
広告費&ROAS(広告費回収率)
広告費回収率(ROAS)は、モバイルアプリ計測に不可欠な指標です。しかし、ゲームのROASを正確に理解するには、詳細な分析が必要です。
これはマニュアルでもできないことはありませんが、多様なソースからの複数のスプレッドシートを集約し、複数の管理画面からデータを引き出し、異なるタイムゾーンと通貨を正規化し、地域、プラットフォーム、アプリ別に並べ替える必要があります。
これらの作業がミスの温床となるのは明確なのでお勧めしません。多くのマーケターがMMPと連携しているのはそのためです。マーケティング計測パートナーは、何百ものメディアソースから提供されたメディアコストデータ(英語)を複数の収益源の収益データと照合してROASを計算できるように支援します。
すべてのメディアによるROASデータが1か所に集められれば、マーケターはデータを簡単に比較できます。キャンペーン、広告グループ、SiteID、クリエイティブごとに、より詳細なデータ分析も可能です。
ROASの算出方法
一定の期間において、費やしたマーケティング費用を、ユーザーによって生成された収益で割って算出します。たとえば、7日目のROASが50%の場合、ユーザー獲得にかかった費用の50%の収益がプレイヤーにより生成されたことを意味します。
クリエイティブ分析
ネットワーク間で広告フォーマット、すなわちクリエイティブのスペックにデータの断片化や標準化の欠如が見られる場合、マーケティングチームによるクリエイティブのパフォーマンスの明確な把握が非常に困難になる可能性があります。
クリエイティブの作成、アップロード、管理は手間のかかるプロセスであり、メディア購入チームにとってボトルネックとなることが少なくありません。チャネルごとのキャンペーンの数が制限され、iOS 14の制約によってクリエイティブのテストサイクルが低速化すると、クリエイティブの効果の定量化が困難になる可能性があります。
そのためマーケターは、複数のパートナーからのデータを正規化し、単一の管理画面に集約できるモバイル計測ソリューションを選択すると同時に、多数のパートナー連携を有効にして対応範囲を拡大する必要があります。
クリエイティブのアップロードと管理を簡単に行い、複数のパートナーへの展開を自動化し、マルチテストとインクリメンタリティテストを利用してクリエイティブの効率性を検証することができれば、キャンペーンのROIを最大化するうえで高い効果が期待できます。
まとめ
モバイルゲームのデベロッパーは、アプリエコノミーのパイオニアでもあります。しかし、モバイルの世界は競争が激化し、優れたアプリを開発するだけでは不十分になってしまいました。マーケティング、広告、分析にリソースを投じることで、予算のモニタリングと最適化を効果的に行えるようになります。
モバイル分野全体の成長を考えると、現段階ではユーザーレベルのデータへのアクセスに制限があります。それでもなお、ゲームアプリのマーケターはビジネス目標の達成を決める多くの要因を握っています。
パンデミックにより加速したモバイルの利用の急増と、時間とコストの節約に対する消費者の需要の増大により、ユーザーのプライバシーを損なわずに複数のプラットフォームでゲーム体験を大きく向上させるテクノロジーが成長しています。
この成長において、マーケターにとって肝心なのは、きめ細かな計測の重要性です。
データを最大限に活用し、適切なインフラをセットアップすることで、マーケティングにおいてスマートな決断を下すことができるようになり、ゲームアプリの成功を次々と達成し、将来の収益性、パフォーマンス、成功の基盤を構築することが可能になります。