動画コンテンツに対する需要は、デジタル広告の領域で最も急速に成長している現象の一つとなっています。
Netflixが広告ベースの階層を追加する意向を発表したことに対して、消費者がそれほど冷静ではなかったのは、これが主な理由です。一方、HBO Max、Hulu、Paramount+、Peacockは2021年にすでに広告サポート付き定額制を開始していました。
コードカッティングが当たり前になり、コネクテッドTV(CTV)は日常生活のいたるところに存在するようになりました。実際、アメリカの全世帯の87%(英語)が少なくとも1台のCTV機器を所有しており、2012年の所有率はわずか38%であったのに対し、劇的な伸びを示しています。
CTVはすべての年齢層で広く採用されていますが、中でも18~34歳が最も人気があり、この熱心な視聴者は広告主にとって貴重なターゲットとなっています。
このガイドでは、CTVの世界について知っておくべきことをご紹介いたします。広告主、ストリーミングサービスプロバイダー、パブリッシャー(または単なる好奇心旺盛な読者)のいずれであっても、コネクテッドTVとは何か、そのエコシステムがどのように機能するか、そしてそのエコシステムの中で広告を成功させるにはどうすればよいかを理解するのに役立つと思います。
それでは、さっそく本題に入りましょう。
コネクテッドTVとは?
コネクテッドTV(Connected TV)、略してCTVは、インターネットに接続し、映像コンテンツを視聴することができるテレビ機器です。
CTV機器には、Wifiとストリーミングを統合したスマートテレビから、XboxやPlaystationなどのゲーム機、Apple TV、Google Chromecast、Amazon Fire TV Stick、Rokuなどのストリーミング機器まで、あらゆるものが含まれています。
CTVの広告費は、今年、米国で33.1%成長し189億ドルに達する(英語)見込みで、米国におけるデジタルビデオの先行投資額では、CTVが市場の3分の2以上(英語)を占めると予想されます。
そのため、リニアTV広告の予算は2022年末までにまだ680億ドルに達する予定ですが、その差はかつてないほど急速に縮まっています。
CTVとOTTの違いは何ですか?
CTVの雑学に入る前に、用語に関してよくある間違いについて整理しておきましょう。マーケティング担当者は、しばしば(誤って)CTVとOTT(英語)を同じ意味で使いますが、この2つの用語は大きく異なります。
OTT(オーバー・ザ・トップ・プロバイダー)は、従来のケーブルテレビ、衛星放送、放送局の枠を超え、専用のアプリやサイトを通じてプレミアムビデオコンテンツを提供します。
簡単に言うと、OTTコンテンツはCTVのデバイスを使って視聴します。代表的なOTTサービスには、以下のようなものがあります。
- Netflix
- Disney+
- Hulu
- ESPN+
- Amazonプライムビデオ
- HBO Max
- Apple TV+
- CBS All Access
- YouTube TV
- Starz
- Pluto TV
- Sling TV
- Tubi
- Fubo TV
- Peacock TV
- Vudu TV
- Crackle TV
- Kanopy TV
CTVのエコシステムとはどのようなものですか?
CTVとOTTの区別がついたところで、エコシステムについて説明します。簡潔に言えば、データがすべての中心であり、テクノロジー企業はCTVのエコシステムの中で貴重な広告スペースを争っているのです。
ストリーミングを可能にするテレビOSは、広告主が活用できる豊富なデータを収集し、その結果、テレビの物理的な生産はOSの採用の二の次となります。これが結果的にテレビのコストを下げているのです。
物理的なテレビメーカーとしてはサムスンとLGが1位と2位ですが、OSのシェアはそれぞれ14%と7%に過ぎず、米国ではRokuとAmazon Fire TVを合わせてスマートテレビ全体の約60%(英語)のシェアを占めており、非常に断片的な環境となっています。
そのため、スマートテレビ、ストリーミング機器、ゲーム機などにおいて、OSの普及率の高さを競うようになりました。
Amazonは、Alexa、Fire OS、Prime Video配信を組み込んだAmazon Fire TVをラインアップし、LG、Samsung、VizioなどのスマートTVメーカーが家庭内の覇権を争っています。
分散化したCTVを構成する主なセグメントと広告主への影響
CTVエコシステムには、8つの主なサブセグメントが存在します。
- 放送局:独自のストリーミングコンテンツを提供します(Hulu、Disney+、Netflixなど)。
- CTVの視聴を可能にするデバイス:テレビでのストリーミングを可能にします(Roku、Amazon Fire TV Stickなど)。
- スマートテレビデバイス:ストリーミング機能を備えたデバイスです(Samsung TV、LG TV、TCL TVなど)。
- Mobile Measurement Partners(MMP):キャンペーンのパフォーマンスを正確に計測し、不正に対処します。
- Supply side platform(SSP):広告枠の販売、取引の最適化、キャンペーンのパフォーマンス計測など、パブリッシャー側から広告取引を管理するソフトウェアソリューションです。
- Demand side platform(DSP):広告購入を仲介し、単一のインターフェイスで広告枠の在庫を提供するプログラマティックツールです。できるだけ低いCPMで広告インプレッションを購入できるサービスも提供しています。
- 広告主:広告を購入します。
パブリッシャーとネットワーク:広告枠を販売します。スマートテレビデバイスメーカーなど、上記のカテゴリのプレイヤーが含まれます(Samsung Ads、Vizio Adszなど)。
広告インベントリソースはそれぞれ異なる方法でデータを収集しているため、得られるインサイトも異なります。ピクセルを設定できるプロバイダーの場合、より正確な計測とエンゲージメントが可能です。
インベントリソースの多くはウォールドガーデンを構築しているため、広告主は彼らと直接取引し、種類の異なる限られたデータセットを活用しなければなりません。またユーザーレベルのデータはそれぞれのプラットフォーム内でしか利用できません。
その結果、競争が激化し、市場の分散化が進みます。これは異なるデバイスやプラットフォームでキャンペーンを正確に計測することが、より困難になることを意味します。
CTVとOTTのマネタイズモデル
CTVとOTTの仕組みを理解したところで、マネタイズの話に移りましょう。知っておくべき主なマネタイズモデルは下記の4つです。
1:サブスクリプションビデオオンデマンド(SVOD)
もっとも広く利用されているモデルです。ユーザーは月額または年額のサブスクリプション料金を支払うことで、コンテンツに無制限にアクセスできます。
Netflix、Amazonプライム、Disney+などが現在このモデルを採用しています。これらのOTTプロバイダーはロイヤリティの高い顧客ベースを構築するため、独占的なコンテンツを定期的に配信し続ける必要があります。
2:アドバタイジングベースドビデオオンデマンド(AVOD)
動画コンテンツに戦略的なプレロール広告、ミッドロール広告、ポストロール広告を差し込むモデルです。パブリッシャーは定期的なサブスクリプション料金に依存する代わりに、バナー広告、スポンサーシップ、有料プレースメント広告を活用して収益を得ることも可能です。
XumoとCrackleの2つのプラットフォームは、現在AVODモデルを採用しています。
3:トランザクションビデオオンデマンド(TVOD)
近年登場した新たなマネタイズモデルで、シリーズの1エピソード分、映画、またはスポーツや音楽などのペイパービューイベントを有料で提供し、1度限りのコンテンツ視聴から収益を得ることを目的としています。
定期的にコンテンツを視聴するロイヤリティの高いオーディエンスに依存するのではなく、他では決して見られないプレミアムなコンテンツを独占的に配信することに焦点を当てています。
4 :ハイブリッドモデル
2つ以上のマネタイズモデルを組み合わせたモデルです。あらゆる形態や規模のストリーミングサービスがこれまで以上にさまざまな収益モデルを試すようになりましたが、その多くがこのハイブリッドモデルを採用しています。
たとえば、Huluはベーシックな広告付きプランと広告なしプラン、Disney+とESPN+、ライブTVをセットにしたバンドルプランを提供しています。
CTV-to-CTVアトリビューションと計測
前述のとおり、CTVは視聴者数が急増していることから、ユーザー獲得に最適なソリューションと言えます。プログラマティック広告のエンゲージメントではファーストパーティおよびサードパーティのデータをかなり具体的に適用できるため、大多数のオーディエンスにリーチできます。
CTV-to-CTVアトリビューションとは、同一デバイス、同一OSでCTVからのアプリインストールにつながったCTV広告アトリビューションを意味します。LTV(顧客生涯価値)やメタデータといったより詳細な指標を活用してアトリビューションの向上を図れるように、MMPを選ぶ際には、Roku、Fire TV、Apple TV、Android TV、Chromecast、ゲーム機、スマートテレビなどのCTVプラットフォームと直接統合できるパートナーを重視することをおすすめします。
ただし、CTVプラットフォームはそれぞれ独自の方法でレポートを作成するため、レポートそのものに一貫性や粒度、データ名のばらつきがある場合があります。
そのため、複数のメディアソース、チャネル、デバイスにまたがるアトリビューションを公正に取得して一元化し、単一の管理画面に統合できるMMPと提携することが重要です。
コネクテッドテレビが広告主にもたらすメリット
CTVの領域は間違いなく、かつてないほど急速に成長しています。市場は成熟に向かっていますが、成長の余地もまだ大きく残されています。ここでは広告主がCTVから得られる主なメリットの一部をご紹介します。
新たなセグメントの創出
従来のテレビとは異なり、CTVでは広告主が人口統計、興味関心、コンテキスト、時間帯、デバイス、地域をもとにオーディエンスにリーチできます。
一方、従来のテレビはComscoreやNielsenといったサードパーティ機関の推計に大きく依存してきましたが、この値はときに信頼性に欠け、多くは情報にもとづく推測をするのが限度です。
OTTコンテンツの視聴者が急増する現状において、CTV領域で獲得できる視聴者は、広告主にとって非常に魅力的で貴重な存在です。だからこそ、このオーディエンスの適切なセグメンテーションが、CTVで成功する鍵となるのです。
ブランドセーフティ
CTVでは広告の配信先がよりコントロールしやすく、大規模な制御が可能です。より具体的なエンゲージメントと性能の良い広告購入システムを組み合わせることで、適切な場所に適切なタイミングで広告を表示できるため、意図しない場所や関連性のない場所への配信を最小限に抑えられます。
クロスデバイス計測とエンゲージメント
CTVでは収集された豊富なデータにもとづき、複数のデバイスにまたがる広告キャンペーンのパフォーマンスを計測できます。クロスデバイスデータを用いることで、ROAS(広告費回収率)を計測してどのキャンペーンが有効かを把握できるため、過去のデータを活かして未来のキャンペーンを最適化できます。
また、ディープリンク技術を活用すれば、コンテキストを加味したカスタマー体験を創出できます。ディープリンクを用いたリンクやQRコードを配置することで、CTVで展開したモバイルアプリキャンペーンから、ユーザーをアプリ内の適切なコンテンツに誘導できます。
ディープリンクによるシームレスなジャーニーの創造は、顧客満足度の向上、収益の増加、そして体験から得られるリターン(ROX)につながる、強力で比較的取り組みやすい方法なのです。
CTV-to-mobileアトリビューションでできること
モバイルアプリのマーケティング担当者が、モバイルアプリの成長とエンゲージメントを促進するためにCTVのメディアを購入するCTV-to-mobileは、特筆すべきクロスデバイスの流れの一つです。
統合がSDKまたはAPIのいずれを介していても、MMPはアプリインストールとインストール後のイベントを正確に計測します。
たとえば、CTV-to-mobileアトリビューションでは、あるモバイルアプリがCTVデバイスで広告を見た後にインストールされた場合、マーケターはこのインストールがCTVに紐づいていると把握できます。
CTVに潜む最大の脅威:スプーフィングと広告不正
米国では広告主の60%がリニアテレビからCTVやOTTに移行していますが、この急激な成長は、不正行為の温床にもなっています。セーフティネットや規制の欠如がOctobot、SneakyTerra、Smokescreenのような広告不正が付け入る隙を与えており、毎月600万ドルもの金額が詐取されています。
不正には通常、3つの形態があります。
- デバイススプーフィング:他のコンピュータシステムになりすます不正(ボットトラフィックなど)
- マルチデバイススプーフィング:複数デバイスで視聴しているかのように見せかける不正
- SDKハッキング:不正集団がSDKの通信を傍受し、偽のアプリインストール、購入、クリックを発生させる不正
こうした不正行為からは多くの学びを得られるため、対策が可能です。以下では現代の不正を回避する方法をいくつかご紹介します。
CTVの広告不正対策
1:連携するインベントリパートナーに対する明確な要件を設定します。信頼性と透明性が高く、使い勝手のいいキャンペーン計測機能(ピクセルトラッキングなど)を利用できるCTVプロバイダーとのみ連携します。
2:信頼できるMMPと連携します。これにより、データの正確性、リアルタイムでの不正行為の検出、ユーザープライバシーの完全な保護が保証されます。
3 – 数字を深く観察し、厳しい質問をして、異常な行動パターンを明らかにする:これらのインストールは、この地域やプラットフォームでの視聴習慣と一致しているのでしょうか?「ユーザーはアプリをダウンロードした直後にアプリをアンインストールしていないか?」、「アプリアクティビティが異常なほど急増していないか?」などです。
CTVマネタイズ戦略のベストプラクティス
続いて、CTVキャンペーンの効果を計測するための戦略の立て方をご紹介します。
ステップ 4データを調査する
従来のテレビ広告購入では、その効果を計測するにはグロスレーティングポイント(GRP)と呼ばれる指標が広く使われてきました。GRPでは広告の視聴率を基準に、広告主がパブリッシャーに支払いを行います。
しかし、GRPはCTVオーディエンスの行動データを十分に活用できる指標ではありません。そこで、以下ではCTVキャンペーンの効果を計測できる指標をいくつかご紹介します。
- ポストビューウェブサイト訪問アトリビューション:CTV広告を見てウェブサイトにアクセスした視聴者
- オンライン購入アトリビューション:広告を見て広告主のウェブサイトまたはCTV経由で購入した広告視聴者
- ポストビューコンバージョン:CTV広告を見てモバイルアプリをインストールし、アプリで購入した視聴者
- フットトラフィックアトリビューション:広告視聴後のオムニチャネルでのエンゲージメントと購入
- オフラインコンバージョントラッキング:購入にいたる前にユーザーが広告を閲覧した回数
- ブランドリフト/ブランド認知度:CTV広告を見たユーザーが、広告主のブランドをどう想起してエンゲージするかで計測される、広告主の市場でのポジショニング
こうしたアクションに関連したデータは必ずしも簡単に取得できるものではありません。だからこそ、データを代わりに取得してくれる優れた計測パートナーを見つけることが重要なのです。
ステップ 4オーディエンスを適切に絞り込む
もっとも収益性の高いオーディエンスを特定して、デジタルの力を活用します。まずは現在のオーディエンスリストを利用して、類似オーディエンスを作成することから始めるのがいいでしょう。その後、興味関心、人口統計、デバイス、地域などのサードパーティのデータをさらに深く掘り下げます。
データ粒度が高くなるほど、関連するメッセージを視聴者に届けるリーチが拡大するため、最終的にCTVキャンペーンのコンバージョン率を促進できます。
ステップ 4計測、評価、反復を行う
CTVキャンペーンを成功させるための原則は、他のすべてのデジタル広告キャンペーンと同じです。つまり、常に計測、評価、反復を行い、収集したオーディエンスインサイトとデータを活用しながら、継続的にキャンペーンを最適化するということです。
この原則を適切に実施するため、データの重複排除、広告不正の検出、アトリビューションの正確な計測を実現するMMPとの連携も検討してみましょう。
重要なポイント
- OTTとCTVは同じではありません。簡単に言えば、OTTは、CTVデバイスで視聴されるコンテンツです。
- 2012年、米国でCTVデバイスを所有する世帯は38%にすぎませんでした。2022年現在では、87%の世帯が少なくとも1台のCTVデバイスを所有しています。
- CTV広告への投資は急増しており、費用対効果の高いオーディエンスや、エンゲージメントの高いプラットフォームでの計測機能がその主な理由です。
- 透明性の高い広告パートナーを見つけてMMPを活用することは、広告不正に対抗するもっとも効果的な手段です。これはCTV広告のパフォーマンスを次のレベルに引き上げることにもつながります。