SKAN 4.0をテストしましょう:データ分析の結果
SKAN 4.0のリリースから7か月が経ちました。この間、私たちは新たなインサイトがつまった宝の山を発見したのでしょうか。それとも未知の海をまださまよっているのでしょうか。
SKAN 5.0を含むWWDC 2023からの最新の話題を吸収しながらも、私たちが近い将来に最も注力するのはSKAN 4.0であることを忘れてはいけません。
アドネットワークが大きな切り替えの準備をしている中で、ひとつはっきりしていることは、徹底的なテストが重要だということです。スムーズな移行を確実にし、貴重なインサイトを得るために、私たちは業界のリーダーたちとチームを組み、SKANの最新バージョンをテストしました。このブログ記事では、SKAN 4.0がこれまでにもたらした影響について掘り下げ、興味深いインサイトを紹介いたします。
変貌を遂げる寸前
この7か月間、SKAN 4.0のポストバックの数が徐々に増えてきています。私たちのデータによると、モバイルユーザーの約65%がすでにSKAN 4をサポートするオペレーティングシステムのバージョン(16.1.1以上)を使用しています。この高い比率は、SKAN 4.0に対応するユーザーベースが相当数存在することを意味しており、更新されたフレームワークの普及と利用に貢献すると考えられます。
また、アプリのデベロッパーとキャンペーンマネージャーの約20%がAppsFlyerのSKAN 4対応SDKにアップグレードしていることも注目に値します。主要なアドネットワークがまだSKAN 4.0に対応していないという事実を考慮すると、これは印象的な数字です。市場がSKAN 4.0の利点と機会を認識し始めたといえるでしょう。最新のSDKを積極的に採用すれば、SKAN 4.0が提供する強力な計測機能とアトリビューションモデルを最大限に活用できるということです。
全体として、SKAN 4.0に対する業界の反応は好意的です。アドネットワークは新しいバージョンを積極的にテストしており、かなりの数のユーザーとデべロッパーがすでにインフラに必要な変更を受け入れています。そのようにしてエコシステムをSKAN 4.0に移行すれば、その可能性を最大限に引き出せるようになります。
いざテストへ
SKAN 4.0のテストでは、大手アドネットワーク3社、および大手広告主約10社と協力する機会を得ました。そのおかげで、アドネットワークと広告主の両方の視点からさまざまな実装をテストし、貴重なインサイトを収集できました。業界のリーダーと緊密に協力することで、さまざまなシナリオを検討し、潜在的な課題を明らかにして、SKAN 4.0の導入を成功させるために不可欠な知識を入手しました。
アドネットワーク側では、既存システムへのSKAN 4.0の統合を検証しました。広告主側では、さまざまな広告キャンペーンへのSKAN 4.0の統合にテストの主眼を置きました。コンバージョンデータの精度と信頼性を確認し、キャンペーンのパフォーマンス指標への影響を分析して、コホートサイズとSKAN 4.0の階層との関係を探るのが狙いでした。
大規模なテストプロセスを進めていく中で、多くの貴重なインサイトを引き出し、喫緊の問題に対する答えを得ることができました。
SKAN 4.0との統合はどの程度複雑か
既存システムとSKAN 4.0の統合は、アドネットワークにしても、広告主にしても、実にスムーズでした。使用したのは、既存のスキーマを新しいモードに移行するConversion Studio。新しいスキーマへのシームレスな移行を促進するこのソリューションで、広告主はSKAN 4.0のすべての最新機能にアクセスできました。最新機能には、粒度が粗いコンバージョン値、3つのポストバック設定、LockWindowなどがあり、広告主は戦略を最適化して、効果的な計測環境を簡単に設定できます。
クラウドの匿名性の階層間の境界線はどこにあるのか
Appleは、SKAN 4.0にクラウドの匿名性という概念を導入。ユーザーの行動シグナルの収集や、キャンペーンのパフォーマンス計測に必要な予算を把握できるという点で、多くの注目を集めました。
私たちの分析では、1アプリ、1キャンペーン、1日あたり数回のインストールがあれば、階層0から階層1に移行できることがわかりました。このことから、SKAN 4.0のキャンペーンは、キャンペーンのnull率が低くなる可能性が高く、当初の想定どおり、粒度の粗いコンバージョン値で任意のトラフィック率をカバーすることになります。
また、階層1と階層2のしきい値にあまり差がないこともわかりました。実際、キャンペーンが階層0から階層2にジャンプするケースもみられました。つまり、優れたコンバージョン値を獲得するには、多額の予算は必要なく、数十回のインストールで十分だということです。しかし、ソースアプリIDのディメンションを提供する階層3に到達するには、インストール数を大幅に増やす必要があります。
もう1つの価値ある側面として、SKAN 4.0では、高いキャンペーン階層に新しいソース識別子フィールドができました。現在、最大4桁まで対応しています。興味深いことに、数十回のインストールが発生すれば桁数を増やすことができます。これにより、アドネットワークはキャンペーン階層を充実させたり、テスト範囲を拡大したりできます。
長期的にLTV(顧客生涯価値)シグナルを獲得するには
SKAN 4.0を使用して長期的にLTV(顧客生涯価値)のパフォーマンスデータを取得する方法を探ってみたところ、興味深い発見がありました。広告主が粒度の粗い「低」のコンバージョン値を2つめのウィンドウに「セッション」として設定したアプリでは、粒度の粗い「低」のコンバージョン値に異なる行動を設定したアプリと比較して、2つめのポストバックを受け取る可能性が有意に高かったのです。
そのため、キャンペーンで起動やリテンションを優先的に計測したい場合は、粒度の粗い「低」のコンバージョン値を「セッション」として設定することをお勧めします。
「none」値が意味するものとは
テストでもうひとつ注目すべき発見がありました。Appleのレポートには、従来のnull、Low、Medium、Highといった値に加えて、粒度の粗いコンバージョン値用に新たに「none」という値が登場するようになりました。
この「none」値は、キャンペーンでプライバシーのしきい値を超えたものの、特定の値が指定されず、粒度の粗いコンバージョン値を受け取れなかったことを示します。そこで、階層1からのポストバックとして、設定された値がないことを示す「none」がAppleから送信されます。
この新しい値を分析してみると、また重要な発見がありました。ASAのUpdateConversionValue APIは、SKAN 4.0に対応していないのです。SKAN 4.0では、最新のコンバージョン値関数(UpdateConversionValue)が粒度の粗いコンバージョン値を変更します。しかし、以前のASA APIにはこのアップデートが適用されていません。このずれは、SKAN 4.0の報告プロセスにリスクをもたらします。粒度の粗いシグナルが上書きされる可能性があるためです。SKAN 4.0のフローの整合性を確保するため、私たちは複数の保護レイヤーを実装し、粒度の粗い値の偶発的な上書きを防止しています。
重要なポイント
SKAN 4.0のテストが終わりに近づいていますが、業界が大きな転換期を迎えようとしているのは明らかです。大手アドネットワークがSKAN 4.0を採用すれば、トラフィックに大きな変化が生じることが考えられます。
SKAN 3と同じレベルに達してはいないものの、貴重なトレンドが明らかになりつつあります。共同テストで得られたインサイトは、戦略を微調整するための有益な指針となります。これらのインサイトを活用すれば、来るべき変化に対応する準備を整え、SKAN 4.0がもたらすチャンスをつかむことができるでしょう。