モバイルアプリ分析について知っておくべきこと
読者の皆さんは、モバイルアプリを成功に導くという目標を掲げていらっしゃることでしょう。
最善かつ唯一の方法は、アプリのパフォーマンスを定期的に追跡することです。
しかし、どのように実施すればよいのでしょうか。そこで役立つのがアプリ分析です。
アプリ分析とは?
アプリ分析では、ユーザージャーニー全体を分析できます。
ユーザーがどのようなコンテンツに接触し、特定のタスクを実行するのにどのくらいの時間がかかり、どのようなタイミングで離脱を決めたのかを把握できます。これらの情報により、ユーザーのリテンションとエンゲージメントを妨げる要素を簡単に特定できます。たとえば、アプリケーションのコンバージョンファネルが複雑、機能が直感的でない、などが挙げられます。
アプリ分析では、リアルタイムの分析とレポートが生成され、次のような質問に対する答えをすぐに確認できます。
- 合計何人のユーザーがアプリをインストールしたか。
- アプリのどの機能がよく使われているか。使われていない機能はあるか。
- アプリのインタラクションやエンゲージメントはどの程度か。
- アプリのアクティブユーザーは何人いるか。
- アプリのユーザーは摩擦を経験しているか。UX(ユーザー体験)に問題はあるか。技術的な問題は?
このようなデータがそろえば、適切な変更やアップデートによってユーザー体験を向上させ、ロイヤリティを高めることができます。
アプリ分析とウェブ分析
ウェブ分析とは、ウェブサイトを訪問し、何らかの行動を起こしたユーザーによって生成されたデータを収集、分析し、レポートを作成することを指します。
ウェブサイトのHTMLソースコードにJavaScriptのトラッキングコードを設置し、Cookieでデータを追跡して、訪問者を識別します。
ウェブ分析では次の指標を監視します。
- ページビュー
- セッション
- ユニークページビュー
- 直帰率
- トラフィックソース
- 再訪問者
- 新規訪問者
一方、アプリ分析は、モバイルアプリケーションからデータを収集します。トラッキングコードを実装するのではなく、ソフトウェア開発キット(SDK)を使用してデータを追跡し、デバイスやオペレーティングシステムのIDでユーザーを識別します。
アプリ分析では次のようなデータを得られ、エンゲージメントや利用状況に関する各種指標となります。
- リテンション率
- 起動率
- 獲得
- アンインストール数
- エンゲージメント
- コンバージョン率
- 離脱数
アプリ分析を行う理由
アプリがユーザーのニーズにどれだけ応えており、どのような改善が必要かを理解するには、アプリ分析が不可欠です。
アプリ分析をモバイルアプリに統合するメリットをいくつか紹介します。
1.正確なユーザーデータを収集
アプリ分析では、リアルタイムデータにアクセスして、ユーザーが何を必要とし、何を求めているかについてのインサイトを得られます。
アプリユーザーに好まれている機能や特徴のほか、あまりうまくいっていない要素に関する情報も得られます。このようにして収集されたデータは精度が高いため、対処すべき問題の見極め、アップグレードの計画、効果的な機能追加や変更に役立ちます。
2.ビジネス目標を追跡
アプリ分析では、最も高い顧客生涯価値(LTV)を生み出す獲得チャネルを簡単に特定できます。そのため、ビジネス目標の追跡や、予算に合わせたマーケティングおよびエンゲージメント戦略の立案に役立ちます。
3.ユーザーのエンゲージメントとリテンションを強化
モバイルアプリ分析では、アプリケーション内のユーザージャーニー全体を分析できます。レポートには、ユーザーが接触したコンテンツや、離脱したタイミングが記録されます。このような情報があれば、エンゲージメントとリテンションを高めるための改善点を簡単に特定できます。
4.パーソナライズされた顧客志向のマーケティングを実現
アプリ分析を行えば、一人ひとりに合わせたカスタマー体験を作り出すことができます。
ユーザーのプロファイルや行動に関する貴重なインサイトが手に入り、効果的なマーケティングおよびリエンゲージメント戦略の立案に役立ちます。
McKinseyの調査によると、顧客の71%が企業がパーソナライズされたインタラクションを提供することを期待している一方で、76%がそれが実現されないと不満を感じるということです。
たとえば、あるユーザーが商品をカートに入れたものの、決済には至らなかったとします。アプリ分析を行えば、ジャーニーのどの地点で離脱を決めたのかを判断し、マーケティング戦略を適宜調整できます。ユーザーがすべてのステップを踏んだにもかかわらず、決済ページで離脱した場合は、アプリ内メッセージで割引コードを提供するなどして、購入手続きを促すことができます。
計測対象
アプリ分析では、いくつかの重要業績評価指標(KPI)、つまりアプリのパフォーマンスを定量化できる指標を追跡します。達成したい目標に合わせて、関連性の高いKPIを選択することが重要です。
ここでは、追跡可能な指標のうち一般的なものを紹介します。
収益のKPI
これらのKPIは、アプリケーションを持続できるだけの収益が上がっているか、マーケティング活動にどれだけの費用がかかっているか、十分な投資収益率(ROI)を確保しているか、といったことを判断する際に役立ちます。
たとえば、次のような指標を追跡できます。
- 顧客獲得コスト
- インストールあたりのコスト
- コンバージョン率
- ユーザー生涯価値(LTV)
- 購入品
- ユーザーあたりの平均収益
ユーザー体験とパフォーマンスのKPI
ユーザー体験(UX)とパフォーマンスのKPIからは、アプリケーションの技術的なパフォーマンス(操作性など)に関するデータを得られます。
バグ、読み込みの遅さ、アプリのレイアウトの問題など、アプリ内パフォーマンスの問題特定に役立ちます。
アプリ分析で追跡できるUXとパフォーマンスのKPIは次のとおりです。
- デバイスとオペレーティングシステム
- 読み込み速度
- 画面解像度
- アプリ内の滞在時間
- タスク成功率
- ユーザーエラー率
- クラッシュレポート
エンゲージメントのKPI
これらの指標は、文字どおりアプリケーションのユーザーエンゲージメントを示すものです。一般的に、ユーザーエンゲージメントが高ければ高いほど、収益も増えます。
多くのモバイルアプリデベロッパーやオーナーが、次のエンゲージメントKPIを追跡しています。
- 離脱率
- リテンション率
- 訪問あたりの平均画面数
- セッションの長さと深さ
- 日次アクティブユーザー数、月次アクティブユーザー数、週次アクティブユーザー数
アプリ分析のベストプラクティス
アプリ分析で何ができるのか、おわかりいただけたと思います。続いて、このツールの正しい使い方について説明します。モバイルアプリ分析を効果的に活用するために、次のヒントを参考にしてください。
初期階からモバイルアプリ分析を利用
アプリ分析から得られるデータは、アプリのテストを開始した瞬間から役に立ちます。早い段階でデータの追跡を開始すれば、アプリケーションの弱みや強みについて、ひいては企業としての進展や成長について理解を深めることができます。
重要な指標に注目
さまざまなアプリの指標を追跡できますが、自分の主目標に関連する指標を洗い出す必要があります。
たとえば、ユーザーのエンゲージメントとリテンションを高めたいのであれば、ダウンロード率ではなく、アプリのリテンション率(一定期間アプリを使い続けているユーザーの割合)を追跡すべきです。
競合のアプリケーションと比較評価
アプリの各種指標は、リテンション率が低いなどの問題を特定し、対処する際に役立ちます。ただ、数字自体にはあまり意味がありません。業界の中で幅広くデータを比較することで、より多くのインサイトを得られます。
Statistaの調査によると、リテンションレベルは業界によって異なり、たとえばビジネスやショッピングアプリはレジャーや観光アプリよりも長く利用される傾向があります。
御社の業界ではアプリリテンション率が平均約30%で、自社アプリでは10%だとしましょう。この場合、アプリには何かしらの問題があると考えられます。
ベンチマーク分析を行えば、競合に遅れをとらないように(あるいは優位に立てるように)、アプリケーションのどの側面に重点を置くべきか判断しやすくなります。
アプリ分析ツールの種類
アプリ分析ツールには、追跡する指標によってさまざまなカテゴリがあります。それぞれの説明を読み、自社アプリの成功に必要なデータを得られるのはどのツールかご確認ください。
アプリ内分析
アプリ内分析ツールでは、アプリ内でのユーザーのあらゆる行動を追跡し、ユーザーエンゲージメントを監視できます。また、ユーザーのデモグラフィックやデバイス情報などの重要な指標も得られます。
アプリパフォーマンス分析
パフォーマンス分析ツールは、厳密にはアプリ内カテゴリに含まれますが、ユーザーよりもアプリ自体に重点を置いています。
このツールでは監査を実行して、アプリの起動中に発生する可能性のあるエラーを特定できます。アップタイム(アプリケーションの動作時間を計測)から、応答性、リソースの使用状況、クラッシュまで、アプリケーションがさまざまなデバイスで正常に作動する、動作に遅延が発生する、あるいはエラーが発生するタイミングを把握し、ユーザーを遠ざけている可能性のある問題を修正できます。
アプリ広告分析
アプリ広告分析ツールは、マーケティングキャンペーンのいわば肝です。
さまざまなマーケティングチャネルでアプリのパフォーマンスを追跡し、広告のクリックやアプリ内の行動を分析できます。この情報をもとにマーケティングを軌道修正すれば、モバイルや店舗での速やかな売上アップにつながります。
アプリ広告ツールは、広告費回収率を計測することもできます。データを活用し、ターゲットオーディエンスとのつながりを深め、マーケティング予算をより効果的に配分できるようになります。
自分に合ったアプリ分析ツールを選ぶには?
ツールは星の数ほどあり、毎年のように新しいものが出てくるので、どれを選ぶべきか迷ってしまうかもしれません。市場にあふれるツールの中から、ニーズに合ったものを選ぶためのヒントを以下にまとめました。
- 料金設定を確認する:当たり前のことですが、ツールの料金設定ポリシーは契約前に必ず確認する必要があります。最低金額、利用可能な成長オプション、平均契約金額(あれば)、公正使用ポリシーを確認しましょう。これらの情報は、費用対効果の高いツール選びに役立ちます。
- 主な機能を確認する:プッシュ通知、A/Bテスト、基本的なKPIの追跡などの一般的な機能を含め、ツールにどのようなコア機能があるか確認します。
- アプリに適した詳細度を選ぶ:アプリを初めて公開すると仮定します。その場合、当面は標準的な分析ツールで事足りるかもしれません。ただし、アプリの独自性が高く、特定のインサイトが必要な場合は、指標をカスタマイズできるオプションを検討してください。
- ツールのサポートレベルを確認する:モバイルアプリ分析ツールには、必要なときに、必要な場所で、適切なサポートを提供してほしいとお望みのはず。ツールに付属するドキュメントの量を確認し、24時間365日対応のホットラインや、問題発生時に対応してくれるアカウントマネージャーの有無を確認しましょう。
重要なポイント
- モバイルアプリ分析とは、アプリのアクティビティから得られるデータを蓄積、計測することです。アプリのパフォーマンスに関するさまざまなレベル(ユーザーの行動、アプリのパフォーマンス、マーケティングなど)の情報を提供し、ユーザージャーニーの全体像を明らかにします。
- ウェブ分析ツールはウェブサイトのデータを追跡し、モバイルアプリ分析ツールはアプリのデータを追跡します。
- アプリ分析ツールにより、ユーザー獲得の質を高め、パフォーマンスを改善し、マーケティングをパーソナライズできます。これらがユーザー体験の向上につながります。リテンションとROIも伸びます。
- ビジネス目標に応じてさまざまなKPIを追跡できます(収益、エンゲージメント、UX、パフォーマンスなど)。
- アプリ分析ツールを導入する際は、料金体系、機能、指標、サポート内容を必ず確認するようにしてください。