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WWDC24とAdAttributionKit:SKANにとどまり静観しよう 

執筆者 Gil Bouhnick

モバイルアプリマーケターであれば、WWDC23のハイライトの1つとして、AppleがSKAN 5と新しいリエンゲージメント機能を発表したことをあげるのではないでしょうか。そんな発表から早一年、WWDC24ではSKAN 5に関する言及はありませんでした。 

では、どんな発表があったのでしょうか。Appleが発表した新しいAPIやデベロッパーツールには、たとえばMarketplaceKitiがあります。これはiOS上で代替アプリマーケットプレイスを安全に運用できるようにするためのものです。 

さらに重要なのがAdAttributionKitで、アプリアトリビューションに大きな変化が生じるとされています。これは一体どのようなもので、デベロッパーやマーケターにどのような影響があるのでしょうか。変化し続けるアプリのエコシステムに生じるであろう次の変化について、本稿で考えてみたいと思います。

AdAttributionKitとは

簡単に言うと、AdAttributionKitはAppleの新しいアトリビューションフレームワークで、より幅広い広告アトリビューション機能を実行できるようになります。Apple App Storeやその他のマーケットプレイスにおけるプライバシー対策をさらに強化するために構築され、特にEUのデジタル市場法(DMA)に対するAppleの解釈にもとづき、規制上の要求に応えようとするものです。

AdAttributionKitとSKANの違い

表面的には、AdAttributionKitはいわばカッコつきの「SKAN 5」といえるかもしれません。SKAN 4と同じく暗号署名された3つのポストバックや64通りのコンバージョン値を提供し、同等のプライバシー機能を備えたフレームワークであるからです。とはいえ、違いがまったくないわけではありません。

代替アプリストアに対応

AdAttributionKitはSKAdNetworkを基盤として構築されており、より多くのマーケットプレイスに優れた統合機能と拡張機能を提供します。Appleのツールに慣れているマーケターなら簡単かつスムーズに適応できます。

AdAttributionKitはiOS 17.4以降に対応しています。一部の機能はまだベータ版で、iOS 18でリリースされる予定です。SKANとは異なり、サポートはApple App Storeにとどまらず、代替マーケットプレイスにも及びます。この機能拡張により、複数のアプリストアをまたぐクロスアトリビューションが可能になります。さまざまなプラットフォーム全体でリーチの最大化を目指すなら、ぜひ活用したい機能です。しかし、代替マーケットプレイスがほぼ存在しないため、この機能の即自的影響は限りなく小さいでしょう。

リエンゲージメント機能

WWDC23でプレビューされたリエンゲージメント機能がAdAttributionKitに組み込まれ、すでにアプリをインストールしているユーザーが広告をクリックした場合のコンバージョンをトラッキングできるようになりました。ユーザーリテンションに重きを置く広告主様にとって、これは大きな機能強化です。一方、SKANではリエンゲージメントがサポートされていないものの、マーケターはディープリンクやその他の方法をうまく活用しながらユーザーとのインタラクションを計測しています。そのため、AdAttributionKitの採用を直ちに迫られることはありません。

AppleがAdAttributionKitにリエンゲージメントを組み込んだのは、すべてのアトリビューションを1か所に集約するためです。リエンゲージメントを統合することで、レポーティングを合理化し、幅広く採用を促したいというのがねらいでしょう。ただ、リエンゲージメントに対するビュースルーアトリビューションが欠如しているため、マーケターが収集できるインサイトの粒度に限りがあり、広告効果の全体像が把握しづらくなっています。

新しいデベロッパーモードと不正防止 

AdAttributionKitには、計測プロセスを簡素化することでアプリの開発とテストを容易にする新しいデベロッパーモードが導入されています。新しいデベロッパーモードでは計測プロセスが簡素化され、アトリビューション設定を簡単にテストできます。複雑な構成は不要で、ライブデータを待つ必要もありません。リアルタイムのデータとデバッグ情報でデバッグが強化されるため、デベロッパーはアトリビューションに関する問題を迅速に特定、修正し、アトリビューションメカニズムの精度と信頼性を確保できます。

さらにAppleは、広告をフォアグラウンドで表示することを義務付けたり、インプレッションを早期に終了させるタイマーの使用を制限したりするなど、広告不正への対策を強化しています。 

これらの変更措置は、広告計測における整合性と精度を高めるというAppleのコミットメントを示すものです。デベロッパーは、新しいモードでテスト段階を大幅にスピードアップできるだけでなく、不正防止対策により、エンゲージメントのメトリクスの精度と有意性を確保できます。

AdAttributionKitへの移行に向けて:アドネットワークと広告主様が知っておくべきこと

SKANと統合済みのネットワークにとって、AdAttributionKitへの移行は比較的簡単なはずです。両システムは、データの重複を引き起こすことなく共存できるように設計されています。特にAppsFlyerのお客様は、同じダッシュボードでSKANとAdAttributionKitの両方のアクティビティを監視できるため、重要な情報を見逃すこともなく安心です。

AdAttributionKitには有望な新機能が備わっていますが、現在の状況を見る限り、広告主様にとって今すぐ採用しなければならない緊急性はありません。代替マーケットプレイスがほぼ存在せず、リエンゲージメントもすでに十分にサポートされているため、AdAttributionKitの今後の展開に気を配りながら、SKANの強力な機能を活用し続けるスタンスで問題ないでしょう。

Gil Bouhnickは、AppsFlyerのプライバシー保護アトリビューションを担当するプロダクトディレクターです。経験豊富なプロダクトの事業家として20年以上の経験を持ち、グローバルな大企業からアーリーステージのスタートアップまで、B2B、B2Cプロダクトの開発を成功に導いてきました。
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