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データクリーンルーム – 新市場における比較分析の全体像

執筆者 Einav Mor-Samuels
Data clean rooms - a comparative overview of a new(ish) market square

これまでモバイルマーケティング担当者がこぞって頼りにしていたのは、ユーザーレベルのデータでした。しかし、近年、プライバシーを重視した規制が急増し、ユーザーレベルのデータは、まるで雪の中のユキヒョウのように見つけにくくなったため、広告主はデータに基づいた意思決定に苦慮しているのが現状です。

そして、もしこれが一時的な事象だとお思いでしたら、考えを改める必要がありそうです。このような環境の変化はさらに加速することが予想され、ユーザーレベルのデータへのアクセスはますます制限され、ビジネスの最適化はいままで以上に困難なものとなるでしょう。

しかし、これは決して悲しい話ではありません。この変化はブランドにとって競争力を養う貴重な機会になる可能性が大いにあります。Forresterは、「倫理的なプライバシー慣行は、消費者主導の価値観に基づく次の差別化要因になるだろう」と述べ、その理由をうまく解説しています。

データクリーンルーム(DCR)は、まさにこの消費者のプライバシーを重視する考え方から生まれたものです。第1回目のブログでご紹介したように、個人情報保護やクロスメディアの計測・最適化の必要性から、マーケターにとって不可欠なツールになりつつあります。

ガートナー社によると、2023年までに多額のメディア予算を持つ広告主の80%がDCRを利用することになり、現在250 ~ 500のDCRがすでに利用可能もしくは開発中の状況にあると推定しています。

では、どのようなタイプのDCRが登場してきているのでしょうか?その前に「DCRとは何なのか」を簡単にご説明いたします。

DCRとは

複数の提供元から集めてきた匿名化された広告データを繋ぎ合わせることができる、安全で隔離されたプラットフォームを想像してみてください。DCRの内部には、広告主のファーストパーティデータとパブリッシャーのローデータが集められ、クロス分析をすることで意思決定にとって重要な結果を得ることができます。。しかし、他のデータ共有方法とは異なり、DCRには詳細な広告データが含まれる一方で、ユーザーレベルのデータ出力には厳格なプライバシー制限が設けられています。

これはどのように実現されるのでしょうか?DCR環境におけるデータ分析のプロセスを、少し専門的な内容でご解説します。

  1. 広告主が選択したデータを取り込む(CRMのデータなど)
  2. パブリッシャーからのローデータは、API経由等のセキュアな方法で取り込まれます。
  3. 広告主はDCRに対してクエリにより問い合わせをすることができ、その回答は集計された形式でのみ返されます。

ここでマーケティング担当者がホッとするような事例をご紹介します。LTV分析は、DCRの最も有名な活用事例の1つであることは間違いないでしょう。

マーケティング担当者は、関係するすべてのユーザーの匿名性を保持するDCRを使用することで、さまざまな指標についてユーザーレベルの分析を行うことができ、その結果、ブランドと顧客の関係全体にわたるLTVを評価することができます。

また、DCRを活用することで、広告主は、競争優位につながる貴重な顧客層を洗い出すことができるようになります。つまり、DCRは、ある意味で偉大な「イコライザー」として機能し、すべての関係者がユーザーレベルデータのプライバシーの懸念を意識することなく、ビジネス上重要度の高いインサイトを共有し、活用できるようにします。

というわけで、前置きが長くなりましたが、本題にはいります。

DCRのタイプ -キャスト・スタッフ紹介

データクリーンルームの種類

すべてのDCRは、ユーザーレベルのデータを非識別化し、共通の属性に基づいてクラスタリングすることで、群衆の中にいる個々の消費者の情報を隠すのに役立ちます。しかし、DCR同士はどのような点で異なるのでしょうか。

ここでは、急速に発展しているDCRを理解するために、実際に存在するタイプ分類してみました。バリューチェーンにおけるそれぞれの相対的なパフォーマンスを評価し、独自の長所と短所を検証してみましょう。

ウォールドガーデン – ビッグテックのプラットフォーム

このタイプのDCRは、提供元ががハードウェア、アプリケーション、またはコンテンツを大幅に制御する、閉鎖的な環境として構成されています。

ウォールドガーデン は、Google、Amazon、Meta(Facebook)が、自社のファーストパーティーのデータを安全にビジネス目的で利用し、同時にライバルからの広告費を奪うために導入したのが始まりです。 

言うまでもなく、全広告メディア支出の70%近くがこの3つのビッグテックに集中しており、広告主がその壁の中にある庭である「DCR」で分析作業をすることを許可しています。Google Ads Data Hub(ADH)、Facebook Advanced Analytics(FAA)、Amazon Marketing Cloud(AMC)の3つです。

このようなセキュリティの厳しい環境内では、ビッグテックがイベントレベルのデータへのアクセスをマーケターに与えています。そのようにすることで、マーケターは消費者のプライバシーやエコシステムの防衛網を危険にさらすことなく、情報に基づいたキャンペーンの決定を下すことができるようになります。

Data clean rooms: Walled gardens

長所 

  • ファーストパーティのデータをイベントレベルのデータでより充実されることをサポートします。

短所

  • 分析用の素材を提供 – このデータを一般のマーケターが読めるようにするには、データサイエンティスト、アナリスト、エンジニアのチームが必要です。 
  • 融通が効かないアーキテクチャ
  • 実用的なデータ(マルチタッチアトリビューション(英語)など)を生成するクロスプラットフォーム能力の欠如
  • 企業間データ連携の欠如
  • 厳密なクエリ機能

DCRピュアプレイ – マルチプラットフォームまたはニュートラルプレイヤー

このタイプのDCRは2つのサブグループで構成されており、それぞれ長所と短所を備えています。

多角化ビジネスとしてのDCR参入

これらは主に、マーケティングアプリケーションやクラウドデータストレージなど、隣接する産業で運営されている レガシー事業で、規制に準拠した方法で信号を収集するためのデータコラボレーション機構を提供しています。このグループには、Epsilon、Measured、BlueConic、Merkleなどのプロバイダーが含まれています。

長所  

  • アーキテクチャーの柔軟性
  • データの種類と分析レベルに関する特注のガバナンスコントロール

短所 

  • ウォールドガーデンへのアクセス制限
  • 狭いパートナーエコシステム 
  • ダウンストリームインテグレーションは限定的 
  • 既存のカスタマーデータプラットフォーム(CDP)/コンプレックスイベントプロセッシング(CEP)機能を活用するため、データに関する潜在的な問題が発生する可能性があります。

DCR特化

Habu、Harbr、InfoSum、Decentriqなどの若手中小規模のDCRプロバイダーや、SnowFlakeなどのエンタープライズ向けツールなどがあります。

長所 

  • アーキテクチャーの柔軟性
  • 既存のデータ配管・ストレージ基盤(SnowFlake)の活用
  • 統合されたパートナーとのエコシステムへのアクセス(SnowFlake) 

短所

  • ファーストパーティーのデータ粒度が限定的
  • データ取り込みをサードパーティーのインフラに依存することが多い
  • ダウンストリームインテグレーションのオプションが少ない

モバイル計測パートナー(MMP)

理想的には、MMP(英語)は信頼できる公平なプレーヤーです。利用可能なすべてのユーザーレベルのデータを顧客独自のビジネスロジックで活用できるようにした上で、ユーザープライバシーを懸念する必要のない集約された、実用的なインサイトを提供可能です。

長所 

  • 充実したリソースの存在 – ユーザーレベルおよびクロスチャネルデータのきめ細かさ
  • リアルタイムのコンバージョンデータ
  • モバイルアプリケーションのビジネスロジックのために構築された包括的なアナリティクス
  • 柔軟な連携オプション
  • 最高品質の集計レポート 

短所

  • データの粒度やクエリ関連のアクションに関するいくつかの制限がSRNによって課される可能性があります。
  • 既存のCDPアーキテクチャの欠如

さらに詳しくご案内します – ビジネスに最適なDCRの選び方とは?

データエコシステムに有意義に予算を使いたい広告主は、今すぐDCRに投資する必要があります。しかし、新しいDCRを導入するにしても、既存のDCRを強化するにしても、どのようにすれば自分のビジネスに最適なソリューションを決定できるのでしょうか?

ここでは、DCRの競争環境について、主に2つの要素から考察してみましょう。

  • データの深さ: データの量と質
  • データの幅: 利用可能なしたデータの種類・バリエーション
ビジネスに最適なデータクリーンルームの選び方

ウォールドガーデンは、データの深さでは有利だが、幅は狭いものです。DCRピュアプレイは通常、DCR技術だけを提供し、データの深さや幅はほとんどない。そしてMMPは、DCRの技術、データの深さと広さに加えて、さまざまなパートナーとの連携を提供できます。

DCRを検討する際には、可能な限り最大限の価値を得るために、いくつかのベストプラクティスがあることを念頭に置いてください。

  • まず、メインチャネル(モバイル、アプリ、Webなど)、ビジネス規模、マーケティングニーズ、データ構造、社内リソースを考慮する必要があります。 
  • そして、消費者を意識したDCRの設計を始めましょう。現在だけでなく、未来に向けても。優れたDCRは、消費者行動の変化を予測するように設定されています。 
  • 最後に、実際のユーザーデータを使ったテストを開始します。消費者行動をリアルタイムで分析し、実用的なインサイトを得ることは、非常に貴重なことです。

なぜ、DCRは(まだ)広く採用されていないのでしょうか?

なぜデータクリーンルームの普及が進まなかったのか
  • 先にお伝えしたいことは、DCRは決して安いものではありません。しかし、このようなプラットフォームを利用する場合、物流や運用の面で負担がかかります。 
  • DCRの成功はデータの共有に根ざしており、すべての広告主が詳細なトランザクションデータをすぐに連携するわけではありません。これは主に、潜在的なプライバシーリスクに対する誤解が原因です。そして、中途半端なデータが入ると、中途半端なデータが出てくるので、せいぜい大雑把な計測にしかならないのです。
  • 実装のベストプラクティスがまだ存在しない領域です。つまり、複数のフォーマットで存在するデータをプールし、それを集計するための準備作業に時間がかかる可能性があるということです。
  • 最後に、ユーザーレベルのデータがまだ利用可能な場合があること(例:AndroidデバイスやATTに許諾したiOSユーザー)を念頭に置くと、DCRソリューションの実装の緊急性の少なくとも一部を軽減している面もあるかもしれません。

適切なテクノロジーパートナー、リソース、データの準備さえあれば、これらのハードルを克服することができるのでしょうか?もちろんです。次回のブログでは、マーケティングの事例をご紹介します。

重要なポイント

  • データエコシステムの中で有意義な費用とリソースを費やす広告主は、最新の計測、セグメンテーション、最適化戦略を活用できるように、粒度の細かいデータがある場所に向かう必要があります。DCRを始めましょう。
  • DCRは、ユーザーレベルのデータを終始匿名化し、効果的なキャンペーン計測やリマーケティング施策に安全に使用することができます。 
  • ウォールドガーデンのDCRソリューションには、データの深さという利点がありますが、データの幅・バリエーションには欠けます。DCRピュアプレイ・ソリューションは通常、DCR技術のみを提供し、データの深さや幅はほとんどありません。そして、ほとんどの場合、MMPはDCRテクノロジー、データの深さと広さ、およびさまざまなパートナーとの連携を提供します。
  • DCRは、重要なデータポイントがプライバシーに完全に準拠した方法で共有・処理される安全な環境を可能にすることで、業界、さらにはCPRAやGDPRなどの州や議会の法律が求める多くのプライバシー中心の規制を満たすための効率的な方法です。

Einav Mor-Samuels

デジタルマーケティングにおける豊富な経験を持つEinavは、AppsFlyerのコンテンツライターです。過去15年にわたり、モバイルマーケティングの分野で十分な経験を積み、市場動向を調査し、顧客のデジタル問題に合わせたソリューションを提供してきました。データに基づいたインサイトをコンテンツに盛り込み、最も複雑なトピックでさえもアクセスしやすく、分かりやすく解説いたします。
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