SKAdNetworkに関する広告主の5つの勘違い
Appleは今年、いくつかのダイナミックな変化を発表し、旧来のアトリビューションチャネルソリューションの復活を推し進めました。
今までほとんど話題にされることがなかった2年前のテクノロジーであるSKAdNetworkは、急速にホットな話題となりました。Appleのプライバシー重視への移行に直面している広告主にとっては希望と懸念の両方をもたらしています。広告主は、SKAdNetworkについて広範な懸念を表明しています。日々のマーケティング上の意思決定において、SKAdNetworkをどのように活用するかについては不確実性があります。集計データ、コンバージョン値、タイマーなどの設定は複雑であり、これがAppleからの全体像とどのように関係しているのかは不確実です。
ここ数か月間、私たちは、ゲーム, eコマース、ファイナンス、フードデリバリーなどの業界のエンタープライズ企業から中小企業までの世界中の何百もの広告主とSKAdNetworkについて大規模な議論をしてきました。これらの広範な議論にもとづいて、SKAdNetworkについて業界に存在する最もよくある5つの勘違いについて、解説いたします。
1)タイマーに関する勘違い
まずは、タイマー、延長、遅延について説明しましょう。SKAdNetworkには24時間タイマーが設定されており、SK関数が初めて呼び出された時(通常はアプリの初回起動時)にスタートします。24時間タイマーの期限が切れると、コンバージョン値がロックされます。良いニュースは、広告主がタイマーを延長する方法を利用することで、このロックされるメカニズムを遅らせることができます。
タイマーの延長
広告主は、キャンペーンの効果を最適化するためには、インストール後24時間以上のユーザーアクティビティを計測する場合があります。一例としては、ゲームアプリにおいて、インストール後5日目の収益にもとづいて最適化したい場合などが挙げられます。
タイマーの延長方法は簡単です:コンバージョン値がアプリ起動によって記録される場合、タイマーはリセットされ、さらに24時間継続します。この機能は何度も実行することができ、理論上、このタイマーリセット方法は最大2か月間続けられます。
この方法の問題点は、毎日(24時間以内に)ユーザーがアプリ起動することに依存していることです。1日アプリを開かなかった場合、タイマーのリセットが行われず、ループが切れてしまいます。さらに、このアプローチを利用すると、計測と最適化が最もエンゲージメントの高いユーザーの活動に大きくもとづく形になり、偏ったオーディエンスを生成します。ユーザー全体を代表するものにはなりません。
また、通常はSKポストバックを1~3日を遅延させますが、このアプローチではこの期間をはるかに超えた形でポストバックされます。さらに、この延長メカニズムを利用するために、コンバージョン値のビットを割り当てる必要があります(例えば、7日間の遅延では3ビットが必要で、実際に計測可能なデータには3ビットしか残りません)。
タイマー遅延
タイマー制限に対するもう一つの解決策はタイマー遅延です。ダウンファネルで発生するイベント(7日間のトライアル後のサブスクリプションや初回のアプリ内購入など)の計測と最適化を確実に行います。
イベントが実行されるまでタイマーの開始を遅延させることができます。これは、registerAppForAdNetworkAttributionとupdateConversionValue関数の最初の呼び出しを遅らせることで実現します。
上述したように、これらの回避策にはトレードオフがあります。一方では、タイマーの開始を遅延させることで、選択されたイベントの計測が確実に行われますが、イベントが発生する前にユーザーが利用をやめた場合、ポストバックは送信されません。すなわち、このイベントを実行したユーザーの数を100%カバーすることができますが、イベントが完了する前にアプリをインストールして解約したユーザーが何人いるのかはわかりません。
2)6ビットに関する勘違い
確かに、コンバージョン値は非常に限られたリソースです。64個の値からなる1つのフィールドには、ユーザージャーニーについてのあらゆる詳細が含まれていなければなりません。限られているとはいえ、1つのフィールドは異なるKPIを含めることができます。1つの固定された解決策を提供するアプローチは通用せず、アプリやKPIによって異なる戦略をとっていく必要があります。
このアプローチには、ビット分割と64セグメントアプローチの2つの方法があります。
ビット分割
ビット分割を利用すると、収益、エンゲージメント、コンバージョン、リテンションなどに関連するいくつかのKPIを同時に計測することができるようなります。 広告主は、各KPIに異なるビット数を割り当てることができますが、ビットの分割が多いほど、KPIデータの粒度が低くなることを覚えておくことが重要です。1つの KPI のみを計測する場合であれば 64 レベルの粒度になりますが、例えば、収益のために3ビット、レベル完了イベントのために3ビットを割り当てた場合は、KPI ごとに 8 レベルの粒度しか付与されません。ビットを6 つに分割した場合は 、各 KPI(バイナリー)ごとに2つのレベルの粒度しか得られません。
64セグメントアプローチ
64セグメントアプローチでは、6つ以上の異なるアプリ内イベントを計測することができますが、この方法では、イベント単位にビットを割り当てるのではなく、セグメントにもとづいてエンドユーザーを評価する形を利用します。
これは、ユーザーを64の異なるセグメントに定義することで実現できます。例えば、1つのバケットには次のようなデータを保持することができます。
- イベント1の回数:2~6回
- イベント2の回数:10回以上
- 総収益:$20~$60
この方法では、各セグメントに対して、 KPI とイベントを無制限に定義できます。この方法のトレードオフは、値を特定の KPI(収益など)にデコードできないことです。また、これらの64のセグメントを検証する際には、セグメント間で重複がないように、アプリ ユーザーの全範囲をカバーしていることを確認して、細心の注意を払う必要があります。基本的に、各ユーザーは常に1つのセグメントにしか該当しない必要があります。
3)設定変更に関する勘違い
AppsFlyerが提供するようなSKAdNetwork用のサーバーベースのソリューションでは、広告主はクラウド上でコンバージョン値の設定を変更することができ、SDKにコマンドが瞬時に送信されます。これにより、顧客のロジックが常に希望の設定で最新の状態に保たれます。
SKAdNetworkの多くの場合と同様に、ここではトレードオフが重要な要素となります。この場合、各設定が変更されると、受信ポストバックが古い設定によるものなのか、新しい設定によるものなのか、判断ができない短い期間が発生し、計測に余分な「ノイズ」となります。そのため、あまり頻繁に戦略を変更することはおすすめできません(例えば、週に一度以上)。
ただし、良いニュースとして、これを回避する方法があります。6ビットのうち1ビットを使用して、ポストバックが古い設定か、新しい設定かを示すことができるようになります。しかし、SKAdNetworkと同様に、これは別のトレードオフを導入します。頻繁に戦略を変更する柔軟性が必要な場合は、KPI で計測できる粒度のレベルで妥協をしなければなりません。
4)並行した計測に関する勘違い
異なるセグメントのユーザーのために、異なる戦略を有効にする方法もあります。基本的な要件は、グループを区別するパラメータが、クライアント側(コンバージョン値を変更する際に)とサーバー側(値を解読する方法を知るために)の両方で認知されていることです。
いくつかの推奨セグメントは次の通りです:
GEO(地域)ベースのセグメンテーション
地域ごとに異なるKPIを計測する。例えば、フランスではユーザーの収益を計測し、米国ではユーザーのエンゲージメントを計測します。
ランダムスプリットによるセグメンテーション
エンドユーザーをランダムにA/Bグループに分割することで、粒度を落とすことなくKPIを並行して計測することができます。ランダム分割の技術的な問題として、A/Bのデコードに1ビットを割り当てる必要があります。例えば、ビット1は、ビット2~6が何を計測しているかをサーバー側に示します。
残念ながら、すべてのタイプのグループ分割が可能というわけではありません。例えば、メディアソースにもとづいた分割はできません。
ランダムスプリットの結果は、媒体へのポストバックの際に、スケールアップしなければならないことに注意することが重要です。これはAppsFlyerのスプリットソリューションで自動的に実行できます。お使いのMMPがこれにも対応していることを確認してください。
5)サーバー間イベントの勘違い
クラウドベースのソリューションでは、イベントをクライアント側に転送して、それに応じてコンバージョン値を変更することができます。しかし、このタイプのフローには、クライアント側のイベントにはない別の制限があります。サーバー間イベントがSKAdNetworkのタイマーの期限が切れる前に送信された場合でも、そのイベントがコンバージョン値に影響を与えるためには、エンドユーザーはタイマーの期限が切れる前にアプリを再度起動する必要があります。
このため、可能な限りクライアント側のイベントを使用することをおすすめします。
この制限にもかかわらず、サーバー/CRMロジックにもとづいて計測と最適化をしていきたい場合は、SKAdNetworkフレームワークがこのオプションをサポートしていることを確認してください。AppsFlyerは、業界初で、サーバー間イベントに対応したSKAdNetworkソリューションであることを誇りに思っています。
挑戦から機会を得る
SKAdNetworkはマーケターに新たな課題を提示します。「すべてを計測する」「すべてにもとづいてキャンペーンを最適化する」ということはもうありません。しかし、これがマーケティングの最適化の終わりを意味するものではありません。計測し、最適化し、優れた成果を上げる機会はまだまだたくさんあります。
コンバージョン値について理解を深め、適切な計画を立て、テストを行い、仮定を検証することで、完璧ではないソリューションを最大限に活用することができます。広告主は、計測ニーズをサポートするための最適なフレームワークを使用することで、競合他社よりもはるかに有利な立場に立つことができます。これらの5つの勘違いをまず紐解くことは、素晴らしいスタートではないでしょうか?