iOSのプライバシーに考慮してユーザー行動を管理広告流入、貢献度の媒体別管理でマーケティング予算の最適化を実現
月間1万人
マッチングアプリ「タップル」で恋人ができた人数ユーザー獲得単価(CPA)が17%改善
Conversion Studioの活用による効果背景:マッチングアプリ「タップル」の広告媒体管理を最適化
株式会社タップルは、国内最大級のユーザー数を持つマッチングアプリ「タップル」を運営する、株式会社サイバーエージェントのグループ企業です。
かつては苦手意識を持っている人も多かったマッチングアプリ。今では多くの未婚の人が恋活や婚活のために使うアプリとして定着しており、タップルを含む大手サービスを中心に、サービスの利用者が伸びています。
また、マッチングアプリには、他のアプリとは違うユニークな特徴があります。それは、ユーザー体験がよくなるほど(恋人ができると)、アプリを使ってもらう期間が短くなったり、使わなくなったりするということです。
「タップルによって恋人が見つかり、退会することを『幸せ退会』と呼んでおり、月間1万人に達していますが、その数をさらに増やしてくことを目標にしています。そのために重要な指標が、アプリをインストールして、会員登録をしていただくユーザーをどれだけ増やせるかです」(中畑氏)
タップルでは、広告計測のツールとして、AppsFlyerをすでに10年程近くから使用しています。同社マーケティング本部で広告計測を担当する佐藤美鈴氏は「SNSアプリやWebなど、全部で10を超える媒体に広告を出稿していますが、全媒体分のローデータをAppsflyerからAPI経由で取り込んで管理しています」と説明します。
各媒体社の管理画面にアクセスをして、各々の成果を確認することもできますが、各媒体社で広告計測の基準が同一でないため、AppsFlyerなしでは広告効果を比較することができません。各媒体の状況を一元管理できるAppsFlyerの使い勝手に、佐藤氏は満足しています。
「AppsFlyerを使えば、全媒体横断した成果が1画面で管理できます。どの媒体からの流入で最終的に成果に至ったかを公平に判断することができるため、流入の多い媒体に予算を最適に振り分けることが可能になりました」(佐藤氏)
課題:ユーザーが多いiOS端末でトラッキングが困難に
そんななか、2021年からAppleが実行に移したプライバシー保護の施策によって、アプリマーケティングの状況は大きく変わりました。
Appleが採用したATT(App Tracking Transparency)により、アプリ側がユーザーをトラッキングできるのは、アプリに表示されるポップアップ画面から、ユーザーがトラッキングを許可した場合に限られることになりました。ほとんどのユーザーはトラッキングを拒否するため、広告効果の計測に大きな問題が生じました。
「従来通りの方法では、iOS端末上のアプリのアクティビティ計測が事実上できない状況になりました。日本はiPhoneユーザーの比率が高く、当社のメインユーザー層は、さらにその比率が高くなっています。iPhoneユーザーのトラッキングができなくなったことは、甚大な影響がありました」(中畑氏)
同社では当初、ATTの実施により、トラッキングを許可した非常に少ないユーザーの動向から推定していました。その結果、媒体の評価に大きなブレが生じることになったのです。
「当社のマーケティングはユーザーを増やし売上を増やすことをKPIに据えています。ATT実施後、例えば当社が広告を出稿しているSNSアプリから流入してきたユーザーが課金してくださる場合、その状況を正しく計測するためには、まずSNS側でトラッキングを許可し、そのうえでさらにタップル上でも許可していただく必要があります。その結果、トラッキングを許可しているユーザーの比率が非常に少なくなり、広告全体の効果を推定するには誤差が大きすぎる事態になりました」(中畑氏)
この問題を解決するため、AppleではSKAdNetwork(SKAN)というAPIのフレームワークを提供しています。SKANを使用すれば、広告主はiOSアプリユーザーの個別トラッキングを行わずに集計したデータをAPI経由で取得できるようになります。
タップルは、SKANを利用することで、アプリ内の課金に貢献する広告媒体の正確な把握ができると考え、対応ソリューションの検討を開始しました。
効果:Conversion Studioの利用前後で獲得単価(CPA)が17%改善
タップルでは、従来から利用していたAppsFlyerが、SKANの計測を可能にするソリューション「SKAN Conversion Studio」を2021年からリリースしていることを知り、早速導入に向けた検討を開始しました。
ただし、SKANによる計測を有効にするためには、広告媒体側もSKANに対応している必要があります。対応媒体は徐々に増えていき、タップルが使用している主要媒体がカバーしたころを見計らって、2022年3月に、AppsFlyer内SKANによるConversion Studioを活用したレポーティングを開始しました。
評価方法を変更するという大規模な改修作業でしたが、2022年6月に主要媒体のSKAN計測による評価が可能になりました。
「課題だったのは、例えばビュースルーなど、各媒体によって評価ポイントの定義が異なっていることでした。それらを理解したうえで、当社として最終的にどう平等に媒体を評価するか、時間をかけて議論を重ねました」(佐藤氏)
中畑氏も「AppsFlyerやSKAN(Apple)が推奨する評価の標準設定があるのですが、全てが当社の基準と一致するわけではありません。出てくる数字をどう解釈すればいいのかには、時間をかけました」と語ります。
Conversion Studioを活用した評価方法の導入から約1年半が経ち、実際に、媒体の評価に変化が表れています。
「広告の出稿量でTOP3規模のかなり大きな投資をしていた媒体が、当社の想定よりも過大評価だったことがわかりました。検討の結果、その媒体の広告費用を45%削減し、適正化できました」(中畑氏)
こうした最適化の結果、ユーザー獲得単価(CPA)は、SKAN導入前と導入後(Conversion Studio導入)の3カ月平均で比較して、約17%の改善が見られています。
また、数値以外の定性的な改善効果もあると中畑氏は話します。
「広告費の投資基準が明確になりました。Conversion Studio導入前は、少ないサンプルから全体のユーザーを想定して施策を実施していたため、本当に正しいのかという疑いがどうしても残っていました。SKANによる計測ができるようになってからはその疑いが晴れ、自分たちは正しいことをしているという確信をもって、投資できるようになりました」
Conversion Studioのもう1つの効果について、佐藤氏は次のように語ります。
「先ほどお話ししたとおり、広告媒体の選定には、ユーザーの課金につながる貢献度を指標としています。ただ、タップルはリリースして10年以上が経つアプリなので、過去にユーザーになった方が再度アプリをダウンロードして、課金するケースも混在していました。AppsFlyerのiOSソリューションでは、アプリ側の簡単な設定で、新規と既存のユーザーを別にカウントすることができます。その結果、私たちが本当に見たい数字である『課金につながった新規ユーザー』の計測が、流入媒体別にできるようになりました。これは大きかったです」
iOSユーザーへの対応のために導入したConversion Studioですが、結果的にタップルの広告戦略をさらに強化することにつながっています。
今後:広告媒体の平等な評価で、事業の成長に寄与する
タップルのマーケティング活動では、今後は一般層に向けて利用の敷居を下げる取り組みを強化していきたいと、中畑氏は話します。
「マッチングアプリは一般化してきたとはいえ、まだ苦手意識を持っている方も少なくありません。マーケティングとしては、初めての方に対して、安心して使えるサービスだということを、さらに理解していただけるよう努めていきたいと考えています」
マーケティング施策はデジタルに限りません。同社では2023年、三重県と「出会い・結婚に関する連携協定」を結びました。マッチングアプリの安全な利用方法の啓発活動や少子化問題解決に向けたユーザーニーズの調査などを共同で実施する計画です。
「自治体などとのリアルの施策を含めて、マッチングアプリの普及に取り組んでいきたいと思います。特に、タップルは安心・安全なアプリであることを理解していただけるよう努めていきたいです」と佐藤氏は言います。
ユーザー拡大を目指すタップルのマーケティング活動にとって、AppsFlyerは、広告媒体を平等に判断するために欠かせないパートナーであると、中畑氏は指摘します。
「各媒体社や代理店は、当たり前ですが自社に一番多く予算を投下してほしいという立場です。しかし当社のビジネスを成長させるには、各媒体を平等に評価し、広告効果を最大化しなければいけません。その点で、中立的なツールであるAppsFlyerは当社にとって心強い存在であり、両社の関係はWin-Winだと思っています。今後もパートナーシップを強化していきたいと考えています」と、中畑氏は最後に語りました。
「従来は推定していた広告媒体の効果を、Conversion Studioによって正確に評価できるようになったことで、特定の媒体予算を45%削減する大胆な見直しを実施できました。その結果、ユーザー獲得単価を17%改善することができました。」
株式会社タップル マーケティング本部 中畑育歩氏&佐藤美鈴氏