ads.txt
ads.txtは、パブリッシャーが自身のウェブサイトに追加できるテキストファイルの1つで、広告インベントリの販売を許可したサプライサイドプラットフォーム(SSP)やアドエクスチェンジが記載されます。プログラマティック広告の透明性を高め、アドフラウドを防止する仕組みとして登場しました。
ads.txtとは
ads.txtの「ads」は、Authorized Digital Sellers(認定デジタル販売者)の略です。インタラクティブ広告協会(IAB)が開発したイニシアティブで、ドメイン盗難、ドメインハイジャック、インベントリの違法なアービトラージ(裁定取引)などのアドフラウドに対抗するためのものです。
ads.textは、パブリッシャーが自身のウェブサーバー上でホストするテキストファイルで、広告インベントリの販売を許可している企業が記載されます。この情報を利用すると、広告主やメディアバイヤーは販売者から受け取った入札リクエストを検証し、偽の広告インベントリや不正な再販に広告予算を費やしてしまうことを防止できます。
ads.txtの設置場所
ads.txtファイルは、パブリッシャーのウェブサイトのルートディレクトリー(websitename.com/ads.txt)に設置されます。 ブラウザーにURLを入力すると、パブリッシャーのads.txtファイルを見ることができます。また、Googleアドマネージャーで検索すると、販売者が有効なads.txtファイルを持っているかどうかを確認できます。
ads.txtは必須なのか
ads.txtは必須ではありません。しかし、自身のサイトの広告枠の販売者を管理し、偽のインベントリが市場に流入することを防止できるため、導入するパブリッシャーが増えています。
より多くの広告主がこの機能を利用し、パブリッシャーの信頼性を検証して、なりすましや不正なインベントリから自身を守るようになれば、より多くのパブリッシャーがads.txtを自身のサイトに実装し、信頼を構築して広告販売を促進していくようになるでしょう。
ads.txtが重要な理由
2021年、デジタルアドフラウドは世界各地の広告主に650億ドルの損害を与えました。ads.txtで販売者を確認すれば、ブランドは偽のインベントリに予算を費やさずにすみ、より多くの予算を合法的なパブリッシャーに充てられるようになります。
デジタル広告という不透明な業界に、ads.txtは透明性をもたします。パブリッシャーのインベントリの販売が許可されているサプライサイドプラットフォーム(SSP)から、正確なウェブスポットに至るまでをバイヤーが確認できるようになり、プログラマティック広告における不正な再販の防止につながります。
広告主やメディアバイヤーはデマンドサイドプラットフォーム(DSP)のアルゴリズムを調整し、ads.txtファイルの情報にもとづいて販売者のスクリーニングプロセスを自動化できます。そうすることで、不正な再販者と取引するリスクを最小限に抑えられます。
信頼できるウェブサイトにのみ広告が表示されるため、ブランドの評判を守ることができます。
ads.txtで防止できるアドフラウドの種類
ads.txtは主にドメイン偽装を防止します。ドメイン偽装にあうと、広告がリクエスト元のサイトではなく、質の低い別のサイトに掲載されます。ads.txtを使うと、広告主はインベントリを販売する資格のあるSSPを確認できるため、偽のインプレッションに無駄金をつぎ込むことがなくなります。この技術により、インベントリレポートの水準が高まります。
ads.txtは、インベントリのアービトラージを抑止することもできます。アービトラージでは、第三者がインプレッションを購入し、再パッケージして価格を引き上げて再販します。インベントリのアービトラージは厳密にはアドフラウドではありませんが、業界全体の信頼を損ねる悪しき風習です。ads.txtは、パブリッシャーのインベントリの認定再販者を明記することで、このような行為を抑制し、パブリッシャーがオープンな市場で自身の評判を守れるようにします。
ドメイン偽装とインベントリのアービトラージはいずれも、プログラマティック広告で利用されるデータ駆動型プラットフォーム(アドエクスチェンジなど)を騙し、ユーザーが質の高いインベントリにアクセスしているかのように見せかけますが、実際には、広告は怪しげなウェブサイトに表示されるか、偽のインプレッションを生成するように設計したアプリケーションをひそかに介して表示されます。
ads.txtを使用するメリット
ここまで説明してきたように、ads.txtのメリットは不正行為の排除、透明性の向上、信頼の構築という点にありますが、使い方が非常に簡単というのもうれしいポイントです。
ads.txtファイルの実装に技術的な専門知識はそれほど必要ありません。パブリッシャーはわずか数分で作成し、アップロードできます。使いやすいフォーマットなのでメンテナンスもしやすく、いつでも販売者を追加したり削除したりして、情報を最新の状態に保つことができます。
ファイルのアップロードや更新を行えるのはウェブサイトの所有者だけなので、安心で安全です。パブリッシャーとしてパートナーシップを管理し、不正な再販を防ぎながら評判を守ることができます。
ads.txtを使用する際の検討事項
ads.txtはすべてのアドフラウドに対処できるわけではないので、パブリッシャーは質の高い広告プラットフォームを利用したり、ネットワークを精査したりするなど、さまざまなベストプラクティスを実施する必要があります。時間とリソースを割き、ads.txtファイルを最新の状態に保つ必要もあります。
手作業で処理するため、人為的なミスで情報の正確性やイニシアティブの効果に影響が及ぶ可能性があります。さらに、詐欺師は404botを悪用し、未監査のads.txtファイルをターゲットにできるため、厳重でクリーンな文書管理が非常に重要です。
ads.txtの仕組み
ads.txtは、プログラマティックエコシステムにおける認定デジタル広告販売者の公開記録として機能します。
パブリッシャーは、ads.txtファイルを自身のウェブサイトに追加してドメインを所有していることを示し、アドエクスチェンジやSSPなどのパートナーアカウントに広告インベントリを販売する資格があることを証明できます。また、プログラマティックプラットフォームは、ads.txtファイルを統合して、自身がインベントリの販売権限を持つパブリッシャーを示すことができます。
IAB Tech Labは近年、パブリッシャーのウェブサイトからads.txtファイルを効率的に取得するクローラーをリリースしました。このクローラーにより、メディアバイヤーや広告主は大量のインベントリ情報を迅速に検証し、認定販売者のリストを作成して、検証プロセスを合理化できるようになりました。
広告主がパブリッシャーのサイトから入札リクエストを受け取ると、クローラーがパブリッシャーのアカウントIDとads.txtファイルを照合し、パブリッシャーとインベントリが正規のものであるかどうかを確認します。広告主がパブリッシャーのアカウントを検証できない場合、予算を守るためにインベントリに入札しないという選択をする可能性があります。
ads.txtの例:主な要素とその内容
パブリッシャーサイトのads.txtファイルを確認するには、ルートドメインに/ads.txtと入力します(domainname.com/ads.txt)。 以下は、ハフポストのウェブサイトにあるads.txtファイルの一部です。huffpost.com/ads.txtで確認できます。
ファイルの各行は、3~4個のパラメーターから成り、それぞれコンマで区切られます。
各フィールドの意味は次のとおりです。
- フィールド#1(必須):パブリッシャーの広告インベントリの販売または再販を許可されたSSP、動画アドネットワーク、またはアドエクスチェンジのドメイン名。
- フィールド#2(必須):フィールド#1に記載トされたドメイン名に対応する識別子。各SSPまたはアドエクスチェンジに関連づけられているパブリッシャーごとに異なります。
- フィールド#3(必須):このフィールドは、インベントリがプログラマティック取引を介して直接販売されている(DIRECT)か、SSPやエクスチェンジなどの認定パートナーを介して販売されている(RESELLER)かを示します。
- フィールド#4(任意):Trustworthy Accountability Group(TAG)に登録されたSSPまたはエクスチェンジのみがこの認証局IDを持ちます。
- #[ディスプレイ](任意):#以降のテキストはパブリッシャーのコメントです。ベンダーが販売しているインベントリの種類を識別するためによく使用されます。広告主には意味のない値であり、IABのクローラーも拾いません。
ads.txt 1.1:最新アップデートについて知っておくべきこと
IAB Tech Labは2022年半ば、業界全体にアップデートを導入しました。新バージョンでは、パブリッシャー、デマンドサイドパートナー、仲介者間のサプライチェーン関係を明確にしています。
主な変更点は、ファイルの先頭に2つの新しい値が追加されたことです。1つがOWNERDOMAIN(インベントリを所有する会社のドメイン名)、もう1つがMANAGERDOMAIN(所有者に代わって広告インベントリを管理する会社のドメイン名)です。この情報は、デジタル広告業界におけるサプライチェーンの透明性と信頼性の向上に役立ちます。
IABはパブリッシャーに対し、ウェブサイトのドメインと所有者のドメインが同じであっても(所有者であり販売者)、OWNERDOMAINデータを含めることを推奨しています。この情報により、バイヤーはインベントリが所有者のものか再販されているものかを区別しやすくなります。パブリッシャーはまた、すべてのDIRECTエントリーが販売者アカウントへの参照であり、そのアカウントを直接管理できることを検証する必要があります。
ads.txtを作成し実装する方法
Google AdSenseまたはGoogleアドマネージャーを使用している場合は、ads.txtファイルが自動的に生成されます。別個に実装する場合は、手動でファイルを作成することもできます。
ads.txtファイルを作成する方法
ads.txtファイルは、任意のテキストエディター(MS Wordやメモ帳など)で作成できます。上記の例を参考に情報を組み合わせましょう。
[ アドエクスチェンジ ], [ パブリッシャー/アカウントID ], [ 関係タイプ ], [ TAG ]
SSPまたはアドエクスチェンジごとに行を変え、各要素をコンマで区切ります。
ads.txtファイルを検証する方法
ad.txtファイルは些細な構文エラーでも壊れてしまう可能性があるため、ファイルをウェブサイトにアップロードする前にチェックすることが重要です。こちらやこちらの無料のオンラインads.txt検証サイトを利用すると、このようなプロセスを自動化できます。
WordPressサイトにads.txtを実装する方法
WordPress.orgは最も人気のあるコンテンツ管理システム(CMS)で、Ads.txt Managerなどのプラグインを使うと、ads.txtファイルの追加も簡単です。プラグインをダウンロードしてインストールしたら、[設定] セクションに移動し、[ads.txt] をクリックしてデータ入力ウィンドウを開きます。ads.txtファイルの情報をコピーしてテキストボックスに貼り付け、変更を保存すれば完了です。
その他のCMSサイトにads.txtを実装する方法
Squarespace、Joomla、Hubspot、Drupal、Wixなど、WordPress以外のCMSを使用している場合は、次の方法でもサイトにads.txtファイルを追加できます。
- Squarespaceの場合:ads.txtファイルをサイトにアップロードし(新しいページを作成するのではなく)、yourdomain.com/ads.txt/がそのファイルを指すようにリダイレクトを設定します。
- Joomlaの場合:WordPressのようにプラグインをダウンロードし、インターフェイスを介してads.txtファイルをアップロードします。
- Hubspotの場合:ads.txtファイルをCMS Hubにアップロードし、ファイルのURLをコピーします。yourdomain.com/ads.txt/がそのファイルを指すようにリダイレクトを設定します。
- Drupalの場合:ads.txt追加用のDrupalモジュールをダウンロードし、ダッシュボードで有効にして、構成ページにads.txtファイルをアップロードします。
- Wixの場合:ダッシュボードの [マーケティングの統合] に移動し、[Ads.txt] で [接続する] をクリックします。[ads.txtファイルを追加] をクリックし、ads.txtファイルのテキストをテキストボックスに貼り付け、[保存] をクリックします。
Google AdSenseでads.txtを実装する方法
Google AdSenseを通じて、ウェブサイトにads.txtファイルを追加できます。アカウントにログインし、[サイト] に移動して、下矢印をクリックして […のサイトで使用するads.txtファイルを作成する] というメッセージを開きます。ファイルをコンピューターにダウンロードし、サイトのルートディレクトリーにアップロードします。
[…のサイトで使用するads.txtファイルを作成する] というメッセージが表示されない場合は、ads.txtファイルに手動でパブリッシャーIDを入力する必要があります。パブリッシャーIDは、[アカウント > 設定 > アカウント情報] で確認できます。Google AdSense以外のアドネットワークを使用している場合は、該当するネットワークに必要な情報を問い合わせます。入手した情報をads.txtファイルに追加し、ウェブサイトにアップロードします。
Googleアドマネージャーでads.txtを実装する方法
パブリッシャーは、Googleアドマネージャーを使用してads.txtファイルを生成、追加できます。アカウントにサインインし、[管理者 > Ads.txtの管理 > ウェブのads.txt] の順に進み、ウェブサイト用のads.txtファイルまたはアプリ用のapp-ads.txtファイルを作成します。自動的にファイルが生成されるので、内容をコピーするか、ファイルをダウンロードします。次に、そのファイルをルートドメインにアップロードします。24時間以上待ち、[Ads.txtの管理] セクションでクローラーがads.txtファイルにアクセスできるか確認します。
重要なポイント
- IAB Tech Labは、主にドメイン偽装や偽のインベントリなどのアドフラウドに対抗するためにads.txtを開発しました。プログラマティック広告の信頼性と透明性を高めることにもつながります。
- ads.txtファイルには、パブリッシャーの広告インベントリを販売することを許可されたアドネットワークとSSPが記載されます。広告主やメディアバイヤーは、この情報を使って、まず内容を確認してから入札に参加できます。
- ads.txtを活用すれば、広告主は不正な再販による収益の損失を回避し、パブリッシャーはオープンな市場で自身の評判を守ることができます。
- サプライチェーンの透明性を向上させるため、ads.txt 1.1のアップデートでは、OWNERDOMAINとMANAGERDOMAINという2つの値が新たに追加されました。
- サイトのads.textファイルを作成するのは簡単。手動でリストを作成するか、Google AdSenseまたはGoogleアドマネージャーでファイルを生成できます。ads.txtファイルを作成する際は、各レコードのフォーマットが正しいことを確認し、その後もファイルを正確かつ最新の状態に保つことが重要です。