アプリストア最適化(ASO)とは、アプリストア(Apple App Store、Google Playストア、Microsoft Store)に合わせてアプリやゲームを最適化し、視認性の最大化、コンバージョン率の向上、オーガニックダウンロードの促進を狙うプロセスです。
ASOは、いわばアプリのSEO(検索エンジン最適化)です。ATTの導入以来、ASOの重要性はさらに増しています。
IDFA(広告用識別子)の非推奨化が徐々に進行し、Appleがコンテクストターゲティングへのシフトを急ピッチで進めるなか、ユーザー獲得はこれまで以上に困難になっています。
このガイドでは、ASO対策の正しい方法やASOがビジネスに与える影響について解説します。
アプリストア最適化とは
アプリストア最適化とは、アプリストアにおけるアプリやゲームの視認性、リーチ、コンバージョン率を向上させるプロセスです。ランキングを上げるための実際の戦略について説明する前に、まずはASOの歴史を簡単に振り返っておきましょう。
ASOの歴史
2008年に登場したAppleのApp Storeは、スマートフォンの使い方に革命をもたらしました。同年、Androidデバイス向けにGoogle Playストアが登場。開設当初は500本程度しかなかったアプリが、2022年にはGoogle Playで350万本、App Storeで220万本を数えるに至りました。
予測どおり、市場は瞬く間に新規参入者であふれ返り、競争が激化。デベロッパーは、2つの大きな課題を突きつけられました。1)アプリをどのように見せたらよいか。2)どのようにすれば、ユーザーに新しいアプリを見つけてもらえるか。
そこで登場したのがASOです。Google検索のSEOに独自のランキング基準が設けられているのと同じように、App Storeにも独自のアルゴリズムがあります。たとえば、アプリのキーワード、インストール数、評価、レビューなどが挙げられます。
Thomas Petit氏(英語)によると、ASOはその成熟度合に応じて2つの段階に分けられます。これらをASO 1.0、ASO 2.0と呼びます。
ASO 1.0
初期のASOでは、主にキーワードに重点が置かれていました。アプリ公開時のベストプラクティスとして推奨されていたのは、アプリのタイトルにキーワードを盛り込み、キーワード欄に主なキーワードを追加することです。競争が激化するにつれ、ブラックハットASO(規約に違反するような手法で、アプリのランキングを操作しようとするASO)なる戦略も登場しました。
ASO 2.0
ASOはその後、もう少し複雑になります。アプリの説明(英語)にキーワードを詰め込むだけでは、もはや文字どおり意味がなくなりました。ここで重要になるのは、ユーザー体験の向上です。
この段階では、ASOアルゴリズムが閲覧行動や参照トラフィックを考慮します。アプリの品質に影響を与える要素として、コンバージョン率やアプリページでの滞在時間などが挙げられます。
現在のASOは、ここからさらに複雑になっています。詳しくは、この記事の続きをお読みください。
ASOが重要な理由
ASOは、インプレッションの増加とオーガニックダウンロードの促進に役立ちます。ブランドの露出が増える、ひいては収益アップにつながるということです。
ワークアウトアプリを探している人がいて、App Storeで「ワークアウトアプリ」と入力したとします。検索結果のトップに表示されるのと5ページ目に表示されるのとでは、まさに雲泥の差があります。
ランキングの順位が上がれば競争力も上がる。これは一目瞭然です。トップに表示されるということは、例えるなら、繁華街のど真ん中にレストランを構えるようなものです。誰の目にも留まりやすく、こちらの魅力をいち早く知ってもらえます。
一方、検索結果の5ページ目という立地は、いわば薄暗い裏通りです。好き好んで足を踏み入れる人はおらず、仮に踏み入れた人がいても、こちらの魅力は伝わりづらいでしょう。
ユーザー獲得戦略としてのASO
ASOに成功すれば、新規ユーザーをオーガニックに獲得できます。このようなユーザーには、有料ユーザーよりもエンゲージメントとロイヤルティが高いという特徴があります。コンバージョン率が向上すればダウンロード数も増え、マーケティングチャネル全体でのユーザー獲得コストの削減につながります。
現在の市場で競争力を維持したいのなら、ASOは欠かすことのできない施策です。大手に太刀打ちできるだけの予算がない場合は、なおさら重要です。
ASOとSEOの違い
アプリストア最適化と検索エンジン最適化は、概念としては非常によく似ています。SEOはウェブサイトを最適化し、Google、Bing、DuckDuckGoなどの検索エンジンでランキング上位を狙う施策であり、ASOはアプリを最適化し、アプリストアでのランキング上位を狙う施策です。
アプリストア最適化と検索エンジン最適化は、概念としては非常によく似ています。SEOはウェブサイトを最適化し、Google、Bing、DuckDuckGoなどの検索エンジンでランキング上位を狙う施策であり、ASOはアプリを最適化し、アプリストアでのランキング上位を狙う施策です。
最大の違いは、その目的にあります。
ASOではオーガニックダウンロードの促進、ユーザー獲得コストの削減、視認性の向上に重点が置かれ、SEOではウェブサイトのオーガニックトラフィックとコンバージョンを促進することが目的です。
iOS App StoreとGoogle Playストア
プラットフォームを問わず、ASOで重要なのは、アプリの製品ページを可能な限り有益で、旬な状態にして、魅力的に見せることです。ただ、AppleのApp StoreとGoogle Playストアにはいくつか大きな違いがあり、特にアルゴリズムとランキング要素については知っておくべきでしょう。
正確な内容は公開されていませんが、どちらのストアのランキングアルゴリズムにも、知覚品質、新鮮さ、ブランド規模、ユーザー価値という4つの概念が大きく関わっています。
ここでは、アルゴリズムに影響するさまざまな要素を紹介します。
Apple App Storeのランキング要素
- アプリ名
- アプリのサブタイトル
- アプリのURL
- キーワード欄
- 更新周期
- ダウンロード数
- エンゲージメント
- インストール数
- レビューと評価
- アプリのアップデート
- アプリ内購入
Google Playストアのランキング要素
- アプリのタイトル
- アプリの短い説明
- アプリの長い説明
- 更新周期
- インストール数
- レビューと評価
- アプリ内購入
ASOを極める
ASOがアプリの成功に不可欠な理由を確認したところで、実践編に入りましょう。より多くのユーザーの目を引き、より多くのダウンロードにつなげるために、この章ではキーワード調査の実施方法と製品ページへの適用方法を説明します。
キーワード調査の実施方法
まずは、キーワードの定義をはっきりさせましょう。キーワードとは、アプリの特徴を捉えた検索可能な言葉であり、主に5つのカテゴリに分けられます。
- 問題:どのようなニーズを満たすか。
- 機能:どのような点が優れているか。
- ユーザー:ユーザー層のデモグラフィック(人口統計的な属性)やサイコグラフィック(心理的な属性)は。
- 場所:どこで、どんな場面で使うか。
- アクション:どのようなアクションが可能になるか。ホテルやレンタカーの予約など。
1 – キーワードのアイデア出し
アイデア出しにはさまざまな方法がありますが、ここではまず、キーワードのリストを作成する方法をいくつか紹介します。
- AppRadarやAppTweakのようなキーワード調査ツールを使用する
- 類語辞典で主なキーワードの類語をできるだけ多く見つける
- ユーザーレビューを読む
- 競合他社のキーワードを調査する
- 自社アプリならではの特徴を文章にしてみる
- 自社アプリのニッチな特徴を洗い出す
- オートコンプリートやAIサジェストキーワードを使う
2 – キーワードの検証と絞り込み
キーワードのリストが充実してきたら、次のポイントに沿って最適なキーワードを絞り込んでいきます。
- 関連性:このキーワードとアプリにはどの程度の関連性があるか。明らかに関連がないものはリストから削除しましょう。
- 難易度&競合:このキーワードで競合するアプリは何本程度あるか。現在の規模で裁定機会はあるか。
- 検索ボリューム:このキーワードで検索するユーザーは何人程度いるか。
ASOで押さえておきたいランキング要素
キーワード調査の方法を理解したところで、次はアプリページにどのように適用するのかを見ていきましょう。
アプリストアの検索結果には、有料アプリがトップに表示されます。ユーザーがオーガニックな結果を見るにはスクロールダウンする必要があります。
ここでは、ランキング順位を上げるために最適化できる項目について説明します。
アプリ名とタイトル
ここで言うアプリのタイトルとは、App StoreやGoogle Playストアの製品ページに表示されるアプリの正式名称のことで、ランキングに最も大きな影響を与える要素とされています。
どちらのストアも30字が上限なので、簡潔にまとめる必要があります(英語の場合、4ワード以内が一般的)。
アプリ名を決める方法
- キーワードのリストを見ながら、タイトルに盛り込む方法を考えます。
- 既存の著作権や商標権に違反しない、独自の呼称を考えます。
- 次のパターンを参考にしてください。
- ブランド名+単一キーワード(Panera Bread、Googleフォト)
- ブランド名:キーワードとフレーズ(Canva:Design)
- 単語やフレーズをくっつける(WeChat、Dropbox)
- まったく新しい言葉をつくる(Airbnb)
効果的なアプリのタイトルの書き方について詳しくは、こちら(英語)のガイドをご覧ください。
1 – サブタイトル
サブタイトルの上限は30字です。タイトルの次にランキングに大きな影響を与えます。これはタグラインでもCTAでもかまいません。スペースの都合上、キーワードを連続して入れる場合はカンマで区切ってください。
2 – キーワード欄
100字を上限にアプリの説明を入力できます。ユーザーには表示されません。複数のキーワードを入力する場合は、カンマで区切ります。ただし、カンマは文字としてカウントされるためご注意ください。また、カンマの後にはスペースを入れないようにしてください。
3 – アプリ内購入(IAP)のタイトル
アプリ内購入の名称はランキングへの影響が最も低いものの、アルゴリズムに付加的なコンテキストを提供します。
4 – パッケージ名(Google Play)
Google Playストアでは、カスタムURL(パッケージ名と呼ばれます)を使ってアプリを公開できます。ここに主なキーワードを追加できますが、URLは公開後変更できないので注意が必要です。
5 – キーワードを重複させない(iOS)
Google Playストアでは、タイトル、説明、その他の箇所に至るまで同じキーワードを使用しているアプリが優遇されます。キーワードは、タイトルと短い説明に1回、長い説明には5回まで使用できます。
一方、iOSでは、1つのキーワードがランキングに考慮されるのは1回限りであるため、App Storeではキーワードの重複を避けるようにしてください。
6 – 短い説明
短い説明は、Google Playでは80字、App Storeでは45字が上限です。アプリで何ができるのかを簡潔にまとめます。潜在的なユーザーが「もっと見る」や「さらに見る」をタップしてアプリの説明を全部読みたくなるような、魅力あふれるコピーにする必要があります。
7 – アプリの説明
いずれのアプリストアも、上限は4,000字です。アプリの説明(英語)には十分なスペースがあるため、次の項目を意識しながら、第1、第2、第3のキーワードを盛り込むようにしてください。
- 魅力的な機能
- このアプリならではの特徴
- ユーザーが気に入る理由
- 主なメリット
- アプリで解決できる問題
受賞歴などの社会的証明を交える、好意的なレビューを共有する、評価が高いことをアピールするなどして、アプリに色を添えます(例:サッカースコアアプリでNo.1の評価!)。
ASOのヒントとコツ
さて、ここまで来ればゴールはすぐそこです。しかし、ASOは継続的で長期的なプロセスであり、テストと監視を繰り返していく必要があります。どんな場合でも、何かしら改善箇所が見つかるものです。
ここでは、ランキングを上げるためのヒントとコツをいくつか紹介します。
アプリをこまめに更新する
誰も古いアプリを使いたいとは思わないでしょう。デザインのトレンドは変化しており、アプリストアでは、アプリの定期的かつ積極的な改善が求められます。
専門家は、App Storeでは4週間ごと、Google Playストアでは6~8週間ごとにメタデータ(アプリ名、説明、画像、動画)を更新することを推奨しています。アプリはそれぞれ異なるため、この更新頻度はあくまでも目安です。テストを繰り返しながら、自社アプリに合った頻度を見つけていくのがよいでしょう。
定期的にアプリを更新するようになれば、アプリストアの更新やアルゴリズムの変更に対応できるのはもちろん、新たな競合の登場に機敏に対処できますし、いつまでも旬なアプリでいられます。
ビジュアルデザインでコンバージョン率を向上させる
正しく説明するだけでは十分ではありません。アプリストアのマーケティングでは、デザインがものを言います。デザインが良くなれば、エンゲージメント、閲覧数、クリック数、コンバージョン数の増加につながります。
ビジュアルの構成要素は3つ。アプリのアイコン、アプリのスクリーンショット、そしてAppプレビューやプロモ動画です。ここでは、これらの要素の特徴についてまとめながら、ランキングとコンバージョン率を向上させるための活用方法を説明します。
1 – アプリのアイコン
アプリのアイコンとして優れたデザインには、個性がある、記憶に残る、拡大縮小できるという特徴があります。そのため、テキストはどうしても必要な場合にだけ使うようにします。写真ではなくグラフィックにすることで、表示される場所に応じて拡大縮小できます。テストすることをお忘れなく。
アプリアイコンについて詳しくは、Appleのガイドライン(英語)をご確認ください。
2 – アプリのスクリーンショット
アプリの内容を第一印象でしっかり伝えるには、スクリーンショットが一番です。表示面積の大きさを考えると、ストーリーを伝え、そのアプリならではの特徴をアピールする絶好の場です。
1枚目のスクリーンショットで、アプリ最大のセールスポイントを伝えましょう。たとえば、Airbnbは「検索。予約。旅行。探検。」と表記し、アプリで何ができるのかを正確に伝えています。
ユーザーの目を引くためのヒントは、次のとおりです。
- シンプルイズベスト。アプリを主役にして、余計な情報は極力排除する。
- テキストは最小限にとどめる。
- スクリーンショットの流れを工夫し、1つのストーリーになるようにする。
- ブランドのカラースキームに合わせて、一貫性のある色を選ぶ。
3 – Appプレビュー&プロモ動画
App StoreのAppプレビュー、Google Playのプロモ動画は、アプリをアピールするための紹介動画です。潜在的なユーザーにアプリが実際に動作している様子を見せることで、外観や操作感をイメージしてもらいやすくなります。
アプリ内で撮影した動画のみを使い、アプリの機能を的確に紹介するようにしてください。
潜在的なユーザーにとってはアプリの動作をじかに体験する機会であり、いわば試乗のようなものだと考えましょう。
ヒントは次のとおりです。
- 最初の5秒間でユーザーを引き込む。
- 動画は短く、テンポを意識。
- 音質は良いものに。
- CTAは明確に。
- 著作権で保護された音楽や画像は使用しない。
- ユーザーが音声なしで動画を見ていると仮定し、テキストやグラフィックでキーメッセージを伝える。
A/Bテストでデータを収集する
プロフィールを書き上げ、スクリーンショットをすべて揃え、競合にも引けを取らないプレビュー動画が完成したとします。ランキングとコンバージョン率を継続的に向上していくには、実験が鍵になります。方法は次のとおりです。
- アプリのカテゴリを調査する:まずは競合に注目し、彼らがどのような順位にあり、どのようにアプリを紹介しているかを確認します。
- 十分な対象者を確保してからパフォーマンスをテストする:テストの前提条件として、アプリのプロフィールを少なくとも400人が閲覧している必要があります。
- 仮説として、シンプルで明確、かつ測定可能な目標を設定する:これにはトラフィック、コンバージョン率、クリックからインストールまでの時間、エンゲージメント率、リテンション率の向上などが挙げられます。
- 異なるロケールでのテストを検討する:Apple App StoreのA/Bテストから得た知見をGoogle Playストアに応用してはいけません。これらのプラットフォームではユーザー体験やユーザー行動が若干異なるため、それぞれ別のテストが必要です。
- 変更は一度に1か所だけ:新しいスクリーンショットであれ、長い説明の修正であれ、重要な変更は1か所だけにします。
- 1~2週間ほどテストを実施し、結果を分析する:有意なデータが得られていることを確認します。
- 結果を分析し、最適化する
季節性を意識する
ホリデーシーズンになるとマライア・キャリーやマイケル・ブーブレが聴きたくなるように、季節はユーザーの行動に変化をもたらします。季節性はぜひ考慮したいところです。新年には、フィットネスアプリのダウンロード数が急増することがわかっています(ジムの新規会員登録と相関)。
アプリのアイコン、スクリーンショット、プロモーションをハロウィンやホリデーシーズンに合わせて更新するだけなら、比較的ハードルは低いのではないでしょうか。ロゴにサンタの帽子をかぶせたり、ホリデーシーズン仕様の新しいゲーム内コンテンツをスクリーンショットで公開したりといった、シンプルなことで構いません。
カテゴリならではのテーマもあります。スポーツ系であれば、ワールドカップが近づいてきたタイミングやNBAの開幕直前の施策、ストリーミングアプリであれば、新たに配信がスタートする大ヒット映画の発表などが考えられます。
これらはすべて、製品ページで対応できます。ただ、クリスマスツリーと同じように、あまりに長くそのままにしておくと、いい加減な印象を与えたり、情報に古さを感じさせたりしてしまうので、注意が必要です。
お疲れ様でした。最後に、ASOに今すぐ役立つ重要なポイントをまとめておきましょう。
- ASOとは、アプリやゲームをアプリストアに合わせて最適化するプロセスであり、視認性を最大限に高め、コンバージョン率を向上させ、オーガニックダウンロードを促進します。
- 上位3位のアプリが全ダウンロード数の約半分を占め、11位以降になるとほぼゼロです。
- App StoreとGoogle PlayストアのASOは基本的に同じですが、Google Playストアとは異なり、App Storeでは、キーワードが重複しても重み付けされることはありません。
- ASOは継続的なプロセスであり、十分なテストが必要です。有意な量のデータが得られていることを確認し、結論を出します。万事、テストあるのみです。