Appleによるプライバシー中心の集約式アトリビューションフレームワーク、SKAdNetwork(SKAN)(英語)は業界に激震をもたらしました。iOS 14.5以降、iOSユーザーの大半がユーザーレベルのデータへのアクセスを拒否するようになったため、キャンペーンの成功度はSKANデータで計測することになります。
SKANはデータプライバシーとマーケティング計測のバランスを取るまったく新しいメカニズムを導入し、iOSでのモバイルアプリマーケティングの様相を一変させました。新たな世界標準であるSKANの中核を成すのが、高機能タイマー、容易に解読できないプライバシーしきい値、キャンペーンの成功を評価するユニークなコンバージョン値システムといった機能です。
iOS 14でAppleがApp Trancking Transparency(ATT)(英語)フレームワークを導入後、プライバシー中心型の方針が注目され、ユーザーデータを取り巻く悪い慣習が排除されています。これは間違いなく意義のある進歩です。
一方で、特にSKANではキャンペーンのパフォーマンスを最適化するうえで必要なデータが制約されるため、新たなフレームワークは様々な課題ももたらしています。
AppsFlyerのガイド「SKANを知る」では、SKAdNetworkに移行するこの時期に得られるインサイトや知識に着目します。このガイドは、SKAdNetworkという広大な未踏の領域に分け入り、ビジネスのサステナブルな成長と収益の向上を目指す皆様のために作成されました。
パブリッシャーと広告主のアプリとの関係が可視化
広告出稿量が多いアプリカテゴリの広告主はどのパブリッシャーと契約を結んでいるか。この問いにはモバイル計測パートナー(MMP)(英語)もアドネットワークも答えられませんでした。
でも、これからは違います。
AppleがiOS 14以降に導入した集約式アトリビューションのソリューション、SKAdNetworkの一環として、広告主とパブリッシャーを結ぶ新しいデータが初めて利用可能になりました。
AppleのパブリッシャーアプリID(Android端末においても提供されていません)はこれまでMMPと広告主には表示されませんでした。しかし、SKAdNetworkのポストバックにはsource-app-idが含まれています。この新しいデータを活用すると、パブリッシャーと広告主との双方向の連携がわかります。
このデータはアプリマーケターにとって非常に価値があります。ターゲティングを可能にし(特にプライバシーが重視される現在は利用可能なデータが制限され、文脈に沿ったシグナルの重要性が急激に高まっています)、広告収益を高め(パブリッシャーはユーザーが親近感を抱きやすいカテゴリやジャンル(英語)を優先的に扱うことができます)、クロスプロモーションを最適化するポイントを把握できます。導入するメリットは他にも多々あります。
このガイドでは、SKAdNetworkの多くのインサイトを明らかにします。広告主の皆様がこの広大な未踏の領域で正しい方向性を維持するための一助になれば幸いです。
サンキーダイアグラムで明らかになるデータ
サンキーダイアグラムは特定の流量を視覚化したもので、流れや数値の大小を矢印の幅で示しています。
サンキーダイアグラムについては、SKAdNetworkから広告主-パブリッシャーに送られるデータを図式化した下表で説明するのがわかりやすいでしょう。
左側はパブリッシャーのアプリカテゴリ、右側が広告主のアプリカテゴリです。どのカテゴリがどの程度連動しているかがわかります。
サンキーダイアグラムには3種類のインサイトがあります。
1) 左から右へ、またはパブリッシャーのアプリカテゴリから広告主のアプリカテゴリを見ると、ソーシャルアプリに出稿した広告がゲームアプリインストール数の51%に寄与しています。
2) 右から左へ見ると、ゲームアプリのダウンロードのうち35%がソーシャルアプリに出稿した広告から誘導されたものです。
3) 左側と右側には各形式の配分のみが表示されています。たとえば、広告経由(有料)アプリインストール数の48%にソーシャルアプリ(パブリッシャー側)の広告が寄与しています。
主な調査結果
この調査結果は、2021年5月10日から6月15日までの間に集計した多量のSKAdNetworkポストバックデータから割り出したものです。
1) 総合評価:ソーシャルアプリとゲームアプリのパブリッシャーが首位に君臨
パブリッシャー側:
- ソーシャルアプリとゲームアプリの広告は有料アプリインストールの92%に躍進(ソーシャルアプリ:48%、ゲームアプリ:44%)。
a) ソーシャルネットワーク広告プラットフォームは広告主の間で人気が高い(Facebook、Snapchat、Twitter、TikTokはすべてSKAdNetworkに統合済み)、b) アプリ業界ではゲームのシェアが高く、パブリッシャーとして需要と収益の両方を高める手段として積極的に広告を出稿するという2点を考慮すると、決して意外な結果ではありません。
- ソーシャルアプリのパブリッシャーがインストールに寄与した半数以上がゲームアプリです。続いてショッピングアプリのインストールに10%、教育アプリとヘルス&フィットネスアプリにそれぞれ7%寄与しています。
- ゲームアプリのパブリッシャーは、実に97%のゲームアプリのインストールに寄与しています。ゲーマーはたくさんのゲームをプレイし、次にプレイするゲームを常に探しているわけですから、これは当然の結果と言えます。
広告主側:
- ゲームアプリは有料インストールの70%を占め、5%にとどまった2位のショッピングアプリに大きく差をつけています。
ゲームアプリのマーケターは有料ユーザーを獲得し需要を促そうとしています。ゲームアプリ業界は他の業界よりもはるかに競争が激しいため、マネタイズと認知度への投資が求められています。
マーケターは総じてデジタル通で、データの活用に自信があり、自分が意志決定を下した広告への投資が利益を生むと自負しています。
2) ゲームアプリ以外のパブリッシャー:ソーシャルアプリが86%のシェアを獲得
- パブリッシャーからゲームアプリの膨大なソースを除外すると、非ゲームアプリのパブリッシャーではソーシャルアプリが86%のシェアを保持していることがわかります。
- ショッピングアプリは第2位につけていますが、パブリッシャーのプラットフォームを全く利用していません。ユーザーがショッピングアプリを利用する理由は商品の購入以外に考えられず、ブランドの目標とも合致しているため、インストールまでのフローを広告で中断するのはかえって逆効果だからです。
- エンターテインメントアプリはパブリッシャーでは第2位のシェアを持ち、ストリーミングアプリと同様、サブスクリプションによる収益を補完し、補足する収益ストリームとして広告を利用するケースが多く、アプリストアではゲームアプリに類似する多くのアプリがエンターテインメントのカテゴリに入ります。
3) ゲームアプリのサブカテゴリ*:収益モデルがパブリッシング先の配分を決定
- 有料ゲームアプリのインストールにハイパーカジュアルゲーム(HC)(英語)のアプリ広告が48%寄与しました。収入源をアプリ内広告(IAA)(英語)に全面的に依存し、人気も高いことから、ハイパーカジュアルゲームはゲームアプリのパブリッシングで支配的な立場にあります。
- それ以外のゲームカテゴリのパブリッシング先にも収益ストリームが寄与しています。ハードコアゲームやソーシャルカジノは主にアプリ内購入(IAP)(英語)から収益を得ており、カジュアルゲームはアプリ内広告(IAA)とアプリ内購入(IAP)からの収入が半々といった状況です。こうしたサブカテゴリはニッチ度が高く、ゲーム上級者への訴求力が高いため、ユーザー層の規模が小さいという問題もあります。
ジャンルはアプリストアのカテゴリをもとに以下のとおり分類:
- ハイパーカジュアル:収益の90%以上が広告収益のアプリ
- カジュアル:カジュアル、パズル、カード、ボード、ワード、教育、トリビア、ファミリー、スポーツ
- ミッドコア:アドベンチャー、シミュレーション、アクション、アーケード、レース
- ハードコア:ストラテジー、ロールプレイング
- ソーシャルカジノ:カジノ(リアルマネーなし)
4) ゲームのジャンル:カジュアルゲームとパズルゲームがパブリッシング先として45%のシェアを維持
- ゲームのカテゴリ別で見ると、カジュアルゲームのアプリが有料ゲームアプリのインストール全体の30%に寄与し、パズルゲームが15%で2位につけています。アプリストア基準のカテゴリでは、ハイパーカジュアルゲームアプリはカジュアルゲームに属します。
前述のとおり、こうしたアプリはアプリ内広告(IAA)に依存し、パブリッシング先として支配的な立場にあります。パズルゲームもカジュアルゲームの一形態であり、比較的プレイしやすく、アプリ内広告(IAA)とアプリ内購入(IAP)を組み合わせた戦略で収益を上げます。
- レーシングゲームはパブリッシング先としてふるわない一方、有料インストールの15%を占めています。
まとめ
- SKAdNetworkの登場により、パブリッシャーと広告主のアプリとを結ぶ新たなデータが初めて利用できるようになりました。
- ソーシャルネットワーク広告プラットフォームとゲームアプリの人気の高さや規模の大きさから、ゲームアプリ内の広告は数多くの有料インストールに寄与しています。
- 熾烈な競争下にあるゲームアプリの分野ではマーケターが有料ユーザーの獲得に特に力を入れたため、有料アプリのインストールが大幅に増加しました。
- 非ゲームアプリ分野のパブリッシングでは、ソーシャルアプリが1位、エンターテインメントアプリが2位につけています。
- 広告はショッピングの動線を中断させる傾向があるため、ショッピングアプリは収益では第2位にありながら、パブリッシャーのプラットフォームを全く利用していません。
- ゲームアプリのパブリッシングでハイパーカジュアルゲームアプリの広告が支配的な立場にあるのは、主に人気の高さと、収益をアプリ内広告(IAA)による収入に全面的に依存しているためです。
5月20日、null CVの比率に関する興味深い変化
5月21日、AppleのSKAdNetworkポストバックでnullを返したコンバージョン値(CV)の比率が劇的に変わりました。
一部のメディアソースでnull CVが80%から20%まで大幅な減少を示した一方、null CVが0%から30%まで急上昇する逆向きのトレンドを示したメディアソースもありました。
計測期間中に10の主要メディアソースから取得したポストバック4,700万件にもとづくデータから、Appleが5月20日にプライバシーしきい値を判定するロジックを変更した可能性があることがわかりました。その結果、翌日のnull CVにすぐさま影響が出ました。
この件についてAppleがコメントしていない中、当社が単独で確度の高い原因を特定できたことには触れておくべきでしょう。
本章では、この大きな変動に対する当社の見解のほか、潜在的な原因、予想される影響、広告主に推奨する対策について述べます。
発端:Appleによるプライバシーしきい値の変更
上述のとおり、Appleが5月20日にプライバシーしきい値を更新したと当社は見ています。
ただ、このプライバシーしきい値とやらは一体どのような代物なのでしょう?いい質問です。Appleはこのドキュメント(英語)で「Appleのプライバシーしきい値を満たすと当社が判断した値であれば、ポストバックにはコンバージョン値とソースアプリのIDを含む場合があります」とのみ言及しています。
この「しきい値を満たす」とはどんな状態を指すのでしょうか。現時点でわかっていることから想像するしかありません。詳細については後述します。
Appleのプライバシーしきい値とは原則、ユニークユーザーの特定や特定に近い行為を排除するものと断言してよさそうです。
SKAdNetworkのような集約型ソリューションでは、ポストバックの数が少ないほど、ある種のユーザーを特定しやすくなります。したがって、パブリッシャーのデータ収集頻度を1日1回まで下げると、含まれるポストバックの数を少なく抑えられます。
その場合、ユーザーが特定されるおそれがあるとAppleが判断すると、パブリッシャーから毎日取得するポストバックの値はnullに変換されます。
言うまでもなく、この措置は広告主に深刻な影響を与えます。コンバージョン値はSKAdNetworkから得られる唯一のデータであり、インストール後のアクティビティを予測し、最終的にはキャンペーンの最適化に貢献します。コンバージョン値が入手できないと広告主は肝心のインストール後のデータが得られず、重要性も価値もかなり低い、インストールデータしか利用できません。
null CVが急上昇したネットワークと急落したネットワークがあった理由
プライバシーしきい値を割り出す際の内部ロジックがネットワークによって異なるからだと当社は考えます。彼らは、たとえば5月20日の事象のような変更があった場合、キャンペーン階層、アドセット、パブリッシャー単位でネットワーク間のパフォーマンスに甚大な変化を引き起こすおそれがあると広告主に注意喚起しています。
たとえば100や1,000ものパブリッシャーを抱えるアドネットワークはパブリッシャーの視点でデータをとらえるようになりますが、ポストバックがごく少数になることも予想されます。ソーシャルネットワークなどのメディアソースではパブリッシャーがひとつかごく少数であるため、アドセット単位でデータを分析します。
ちなみにFacebookは先日、同社がFacebookに適用させるプライバシーしきい値は1キャンペーンにつき1日128インストールと広告主に勧告しています。
AppleがSKAdNetworkキャンペーンの上限を100にしたという実情はともかく、プライバシーしきい値は総じてネットワークを複雑にします。この仮説を裏付ける情報として、当社が取材したアドネットワークの一部が本件についての問題を認識し、null値の発生率を減らすよう作業を進めていることを確認しました。
Appleのプライバシーしきい値に関する最新のインサイト
先日のプライバシーしきい値の更新がはらむ問題点をさらに明確にするため、当社では1回のキャンペーン当たりのnull CVの割合をポストバック数と比較し、その後もう一度キャンペーン数と比較しました。
以下に示すデータは、アプリ、キャンペーン、ネットワークの1日当たりのポストバック数にもとづいています。ただ、Appleのロジックが含まれているとばかり思っていたソースアプリのIDディメンションは含まれていません。他の要因の関与は不明なので、今回得たデータは個別のベンチマークではなく、一般的なトレンドに目を向ける上で役立つでしょう。
1アプリ、1キャンペーン、1日あたりのポストバック数におけるnull CVの比率(7月1~10日)
サンプルデータの規模:ポストバック1,500万件、メディアソース55件、アプリ2,400種類
一方、null CVの割合をキャンペーン数と比較すると、キャンペーン数が大体57を超えたあたりでnull CVの比率は約10%から30%超に上昇するのがわかりました。このトレンドは一定しておらず、キャンペーン数が61回目と71回目で急落するトレンドが明確に示されていますが、それでも上向きにシフトしています。
推奨される対策
- 広告主は広告を出稿するあらゆるネットワークで、キャンペーン1回当たりのインストール数増加に結び付くよう自社のキャンペーン構造を刷新し、該当する場合はネットワーク(例:Facebook)のガイダンスに従うことを推奨します。
- ネットワークはAppleに明確な指針の提示を求め、ロジックや値が今後改訂される際にはAppleからその旨を示す注意喚起を受け取れるようにし、キャンペーンタクソノミーの推奨事項を適切に更新できるようにしておくと、将来的には有利な立場が取れるかもしれません。
- 広告主はセグメント分けが煩雑なキャンペーンをやめ、推奨事項に従ってキャンペーン集計などの計測を実施するなど、アジャイルな対応を取るべきでしょう。
結論
プライバシーしきい値は、プライバシーが重視される現在には欠かせない要素です。どのようなプライバシー対策を、いつ、どのように展開するかについて透明性を高めておくと、マーケターは、キャンペーンの最適化と同時に新たなプライバシー基準を遵守できるようになります。
情報の適合性を極限まで高めるため、当社では情報を入手し次第、このサイトの投稿を更新し、現状並びに今後のトレンドを引き続き緊密に監視し、分析し、問題点の究明に努めます。
非オーガニックインストール(NOI)数が低い理由(および不安を取り除くアドバイス)
プライバシー中心の時代を迎え、モバイルアプリマーケターはキャンペーンの計測やアトリビューション、最適化の方針を考え直す段階にあります。AppleのSKAdNetwork(SKAN)から提供されるインストール後のデータに制限が課せられる中、彼らはLTV(顧客生涯価値)(英語)やROAS(広告費回収率)(英語)を割り出さねばならない現実と戦っています。
その上iOS 14はもうひとつの重要なパフォーマンス指標、すなわち非オーガニックインストール数(NOI)にも悪影響を及ぼし、多くの広告主が頭を抱えています。
その実情を、当社の調査結果が如実に語っています。
平均的なアプリでiOS 14リリース前のアトリビューション値と比較すると、SKANに紐付けられた非オーガニックインストール(NOI)数は37%低下しています。
この現象に悩まされているのは御社のアプリだけではありません。
今回の分析は、同一アプリ、同一ネットワーク、同一の期間内にサンプリングしたデータから、2021年2月と7月のトラフィックを比較したものです。すなわち、比較の有効性が担保できるよう、アプリとネットワークは2月と7月で同じ組み合わせになるよう設定する必要がありました。
非オーガニックインストール(NOI)数の低下を招いた6つの理由
1) SKANバージョン2.2以降の実装率が低く、ビュースルーアトリビューション(VTA)を計測できない
ビュースルーアトリビューション(VTA)はSKANバージョン2.2以降でのみ有効であり、当該バージョンからのポストバック中22%がビュースルーであることを確認しました。
一方、SKAN2.2より前のバージョンからのポストバックは76%にも達しています。ネットワークやパブリッシャーがバージョン2.2以降をサポートしていないか、エンドユーザーがパブリッシャーのアプリをバージョンアップしていない場合、理屈では76%のポストバックのうち22%は、記録されていないビュースルーアトリビューション(VTA)の可能性があります。
当社データによると、パブリッシャーの85%、ネットワークの73%がバージョン2.2以降を実装しています。ところが、膨大なトラフィックがある業界のメジャープレイヤーがまだバージョン2.2以降を実装しておらず、上述した数字には含まれていないという実情があります。
いずれにせよ、三者の歯車が噛み合う必要があります。
ビュースルーアトリビューション(VTA)は3つの条件を満たさないと記録できません。ネットワークとパブリッシャーの両方がSKANバージョン2.2以降に対応し、エンドユーザーもパブリッシャーのアプリを最新バージョンまで更新する必要があります。
2) パブリッシャーのアプリの中にはSKANを実装していないものがある
appsflyer.com/blog/mobile-marketing/ios-covid-mobile-web-comeback/(opens in a new tab)
SKANポストバックが送信されるには3つの条件が揃う必要があります。
- アドネットワークが広告に署名する
- 広告主のアプリがコンバージョン値を更新する
- パブリッシャーのアプリがSKANフローを流す
広告主のアプリとネットワークのみを計測する場合も、パブリッシャーのアプリを関与させる必要があります。一部にSKANを実装していないケースも確認していますが、これも非オーガニックインストール(NOI)数の低下を招いた原因とみなされています。
3) SKANのウェブアトリビューションがない
ウェブは新規ユーザーの獲得と既存顧客とのエンゲージメントの両方において魅力的なソースであるため、アプリマーケターにとってますます重要なタッチポイントになりつつあります。当社データによると、インストールの約10%がウェブのタッチポイントに起因する(英語)ものです。
しかし、SKANはウェブアトリビューションをサポートしていません……
また、ジャーニーの多くが、やはりウェブのタッチポイントであるGoogle検索を起点としています。SafariのようにiOS標準の検索エンジンではありませんが、Google ChromeはGoogleのチャネル経由でiOSに10%ほどインストールされています。
4) 同意を得ていないユーザーのセルフアトリビューションが期待できない
iOS 14がリリースされるまでは、ルックバック期間中に取得されたエンゲージメントで、ファネル内で支払い対象のタッチポイントなら段階を問わず、セルフレポーティングネットワーク(SRN媒体)ですべて広告費を請求できました。
ところがSKAN導入後、SRNは他のメディアソースと同様、ラストタッチアトリビューションが請求対象になりました。最後のタッチポイントで貢献したネットワークが、契約成立を示すポストバックを受け取ります。それまでのエンゲージメントは評価対象外ですのでポストバックは送信されません。
広告主がSRN管理画面でSKAN実装前と後のトラフィックを比較すると、明らかに差分が生じているのがわかります。
5)iOS予算の減少
当社のデータでは、iOSの予算が15~20%減少し、非オーガニックインストール(NOI)やアトリビューション全般に影響が及んでいることが示されています。その一方で、予算全体でiOS予算が占める割合は10%減にとどまっています。
ただ、このトレンドはまったく安定していません。広告予算をAndroidのキャンペーンに回した企業もあれば、iOS中心の姿勢を崩さない企業もあります。
6)パフォーマンスや業界全体が移行期にある
モバイルアプリ界のパラダイムシフトを過大評価してはいけません。
新しいモデルの構築や新しい手法の最適化は技術者側に負担をかけます。ただし、時間がかかるといっても2か月程度だと考えておきましょう。
こうした移行期にデータが制限されるとターゲティングや最適化が不十分なため、トラフィックが落ちます。
今できること
先行きの不透明感は否定できないものの、この移行期にトラフィック増を目指す場合も、高いLTV(顧客生涯価値)や健全なROAS(広告費回収率)を目指す場合も、キャンペーン効果の可測性やパフォーマンス向上につなげる対策は依然として多数あります。
自信を持ってiOS 14キャンペーンに投資するうえで役立つ今後の対策やアドバイスをいくつかご紹介します。
- 提携するパブリッシャーやネットワークがSKANをバージョン2.2以降にアップグレード済みか確認してください。SKANを実装していなければ実装するよう依頼してください。ビュースルーアトリビューション(VTA)はパブリッシャーの環境が整うほど向上します。
- ROAS(広告費回収率)の計測やLTV(顧客生涯価値)予測は64のビットの組み合わせによるコンバージョン値オプションで十分対応できます。豊富なデータは得られませんが、良質のユーザーを狙ったキャンペーンを構築できないわけではありません。64ビットで希望通りの設定を可能にする手段はいくつもあります。当社がゲームアプリのマーケター向けに制作したiOS 14ガイドで、CrazyLabsのCTO、Eran Heres氏はこう述べています。
“ユーザーのアプリ内購入で得た収益と広告収益の予測をベースに、当社独自のモデルを構築しました。64通りの値をフル活用し、ROAS(広告費回収率)とLTV(顧客生涯価値)をかなりの精度で計測できるようになりました。”
予測に求められる十分な量のデータという文脈から、Syboのプロダクト担当ディレクター、Tiffany Keller氏は先日投稿したDeconstructor of Funというコラム(英語)でこのように述べています。「値の最適化(VO)入札でミッドコアゲームやハードコアゲームのビッグチャンスが根こそぎ奪われるというのは、たとえば、インストールから24~72時間で誰かが$15のアプリ内購入(IAP)をした事実が記録されても、彼らが$2のスターターパックも購入した情報は含まれないということです。これではインストールの一般的なLTV(顧客生涯価値)のバケットを正確に予測したとは言えません」
- ATTポップアップの予想以上に高いオプトイン率をベンチマークに活用します。同意済みユーザーの割合が予想以上に高いのは同意コホートのみならず、非同意コホートに知見を適用したり評価したりする目的でも朗報と言えます。
- ユーザーをウェブからアプリに誘導します。ウェブはメディアコストを低く抑えられ、アプリへのジャーニーがスムーズなうえ、可測性を十分に維持できます。
- ユーザーのプライバシーを守りつつ、正確なアトリビューションを活用します。利用可能なデータポイントはすべて活用し、パートナーとのデータ共有手段は基準を遵守するよう努めます。
- ATTオプトイン率を上げるクリエイティブな手段を見つけます。
- タイミング – ユーザーのジャーニーでATTポップアップを表示するタイミングを的確に把握し、既存ユーザーと新規ユーザーとで別の経路を用意します。また、アトリビューションSDKが起動する前にATTポップアップを表示させる的確なタイミングを把握すると、大きなプラスの影響が得られることもあります(IDFA率が180%向上)。ATTポップアップの表示で生じる遅延は通常数秒程度です。
- カスタマイズ – ATTポップアップの太字以外のテキストは編集可能なので、ユーザーのIDFAを取得する理由を的確に説明できます。
- ATTプレポップアップ – Appleの標準ATTポップアップの前に御社独自のポップアップを表示させます。デザインやタイミング、メッセージ文など、御社のアプリに最適な形にカスタマイズできます。
- アプリ全体でIDFV(英語)を使用してファーストパーティデータの収集し、既存のオーディエンスセグメントを連携させて、アプリ内メッセージ機能やプッシュ通知でユーザーとやり取りします(主にゲームアプリに適しています)。
- 長期的な解決策:インクリメンタリティテストや予測分析を採用します。この分野はアトリビューション系企業、セルフレポーティングネットワーク(SRN)、アドネットワークなど、業界全体で大量に予算が投入されています。
広告主はデータサイエンスチームを動員し、上述したアドバイスをもとに社内機能の強化に着手する必要があります。
この対策に即効性はありませんが、社内予測に応用できるデータを入手できます。プライバシーの時代には必須のデータです。
まとめとアドバイス
1) プライバシーを重視する昨今の風潮により、あらゆる業界のマーケターは技術革新やデータサイエンス、データ統合への依存度を高めていますが、こうしたプロセスはいずれも実を結ぶまで時間がかかります。
2) 近年さまざまなプライバシー関連の規制(LAT, GDPR, CCPAなど)が適用されたことをふまえ、トラッキングをオプトアウトしたユーザー、特にiOS市場でLATの規制下にあるユーザーの割合は約30%と、iOS 14のリリース前も決して少数ではないことを念頭に置く必要があります。
3) 集約データを活用すると、プライバシー関連規制を遵守する立場を守りつつ、データが制限される中でもコンバージョン値管理ツールや予測解析ツールで柔軟に意志決定できます。
結論:プライバシーの時代でも、ボリュームとパフォーマンスの維持は十分に可能です。時間の問題と言っても過言ではありません。